別日⑰ 次へのステップ



 妖精ぺぺは、ある山の上にある小さな神社に住んでいる。


 妖精なので、ほとんどの人間には見えない。



 一人の女性がやってきた。


 そして本殿で手を合わせ、何かお願い事をしている。


 神様曰く、女性は会社でいじめにあっていて、それがとても辛いので、いじめがなくなるようにという願いらしい。


「神様ー。どうにかしてあげて-」


 ぺぺがお願いをすると、神様は困った顔をする。


「そうしてあげたいんだけど、これは女性には必要な出来事なんだよ」


 神様が言うには、これは女性が次のステップにあがるために必要な出来事なのだという。


「この子は、ある趣味を仕事にすることを生前に決めてきているんだよ。所謂、宿命というやつだね。そちらに行くようにするには、今の会社を辞めなくてはならない。でも自分から辞めることはしないから、強制的に辞めるようにさせられているんだよ」


「じゃあ、助けてあげることは出来ないんだね」


 ぺぺがしゅんとして言うと、神様は首を振る。


「そんなことはないよ。この子を守っている守護霊の人達が、私の所に連れてきたということは、どうにかしてほしいということなんだよ。辛さと悲しみを少しでも軽減してあげたいという慈悲だね。だから助けてあげないとね」


 そう言って神様は、女性の前まで来ると頭に手を当てた。


「悲しみと辛さを半分しか取ってあげれないけど、頑張るんだよ」


 神様はとても慈悲深い笑顔を女性に向け、話しかける。


「よく今まで我慢したね。もうその必要はないんだよ。無理せずに逃げていいんだよ」


 すると、女性はなぜか涙を流し始めた。


「あれ? 涙が……」


 神様の声は女性には聞こえていない。だが、魂には神様の声は聞こえているため、魂が反応して涙が流れているのだとぺぺは聞いたことを思い出す。


「涙は悲しみを取ってくれる。泣いていいんだよ。少しは気持ちが楽になるからね」


 そう言って神様は女性が立ち去るまで頭をなでた。

 ぺぺも女性の肩に止まり頬をよしよししてあげるのだった。


「がんばってね」


 ぺぺは女性にずっと励まし続けるのだった。




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