97日目 絵馬に願いを



 妖精ぺぺは、ある山の上にある小さな神社に住んでいる。


 妖精なので、ほとんどの人間には見えない。



 ぺぺが本殿に行くと、何やら神様がお仕事をしていた。

 御守りに神様の気を入れているのだと言う。


「神様、僕もお手伝いするー!」


 ぺぺが言うと、小さい神様がどこからかやってきた。


「ぺぺ。 お前は手伝わなくてよい!」

「えええ! なんでー」

「これは神様が皆のためにしておることじゃ。お前は邪魔をしてはだめだ」


 ぺぺはしょんぼりして下を向くと、神様がぺぺに、


「ぺぺ。じゃあこの絵馬にいい気を入れておくれ」


 と笑った。


 ぺぺは喜んで絵馬に、頑張って気を入れた。


 すると、その絵馬を住職さんは、見本で飾った。


 ぺぺは、あれっと首を傾げる。

 何故自分のが飾られたのか?

 神様は、笑って言った。


「ぺぺ。何を思って絵馬に気を入れたんだい?」


 ぺぺは言う。


「絵馬が誰かの目にとまりますようにって」

「ほほほ。じゃあ願いは叶ったのう」

「え?」

「見本で飾られれば、皆が見てくれるだろう」


 確かにそうだが、ぺぺが願ったのはその意味じゃないのになーと、絵馬にぶら下がる。


「これじゃあ、僕の絵馬は一生売れないよー」

「そのほうが、皆にはいいぞ」


 小さな神様がぼそっと言うのだった。




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