94日目 酔っ払いのおじさん



 妖精ぺぺは、ある山の上にある小さな神社に住んでいる。


 妖精なので、ほとんどの人間には見えない。



 夕方、日も大分傾いてきたころ、一人のおじさんがやってきた。

 だがどうも酒を飲んでいるらしく、千鳥足だ。


 おじさんは本殿で手を合わせると、そのまま近くのベンチに座った。


「うー。なんでそんなこと言うんだよー…………」


 おじさんは何やらブツブツ言っているが意味が分からない。

 ぺぺがおじさんの顔の前に行くと、目が合った。


「お! ちびちゃんは誰だ? ヒック」


 ぺぺは驚く。このおじさん、たまに神社に来るがぺぺが視えたことがないのだ。

 不思議に思っていると、神様が横に現れたので聞いてみた。


「神様ー。なんでこのおじさん、僕のこと見えてるの?」


「大分お酒が入ってるね。酔いがひどいとあちらの世界にいることがあるからね。普段ぺぺが視えない人でも酔うと視えたり話せたりする人がいるんだよ」

「そうななんだー」


 するとおじさんはそのまま寝てしまった。


「寝ちゃったね。おじさん」

「この子はちょっと辛いことがあると、酒を飲んで発散する癖があるからね。嫌なことがあったみたいだね。少しの間起きないだろうから、起きるまで何事もないように見ていてあげようね」


「うん。わかったー」


 と言った瞬間、


 ベチッ!


 おじさんが振り上げた手がぺぺに辺り、地面にたたき付けられた。


 それを見た神様は、何とも言えない顔をしてぺぺを助けながら、


「ペペ、今度から少し離れて見守るようにしなさい」


 と注意するのだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る