90日目 どんぐりの背比べ



 妖精ぺぺは、ある山の上にある小さな神社に住んでいる。


 妖精なので、ほとんどの人間には見えない。



 最近めっきり寒くなってきた。


 寒くなるとぺぺはいつも本殿のストーブの前へと行く。そこには他の妖精達もけっこう集まっていた。


 そんなぺぺ達に、小さな神様がいつも文句を言う。


「お前達、毎日ストーブの前でたむろっているのではない。邪魔であるぞ」


「そう言いながら小さな神様もストーブの前で暖まってるじゃないか」


 妖精達も小さな神様に言い返す。


「わしはいいのだ。ここで仕事をしてるからな」


 そう言いながら小さな神様もストーブの前から離れようとしない。


「じゃあ小さな神様は仕事してきなよー」


 ぺぺがそう言って小さな神様の首の後ろの襟元をひっぱるがびくともしない。


「ふん。チビのぺぺには負けんわい!」


 ぺぺはムッとする。


「自分だってチビのくせにー!」


 小さな神様がキッとぺぺを睨み、立ち上がるとぺぺの前へと並ぶ。


「ほれ! 見てみー。どう見てもわしのがお前より高いじゃろ!」

「ちょっと高いだけじゃないかー」

「ふん! ちょっとじゃないぞ。顔1つ分高いぞ」


 小さな神様はどうだと言わんばかりに顎を突き出し胸を張る。ぺぺはと言うと頑張って背伸びしてどうにか高く見せようと頑張っている。


 そんな仕様もないことを争っている2人を見ていた他の妖精達は、


「どっちもチビなのにね」

「チビ二人が争ってるよ」


 と言いながらゲラゲラ笑うのだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る