別日⑮ 寿命によって違う
妖精ぺぺは、ある山の上にある小さな神社に住んでいる。
妖精なので、ほとんどの人間には見えない。
ぺぺが本殿へ行くと、今日もご祈祷が行われていた。
神様がご祈祷を受けている年配の男性の願いを聞いていた。
ご祈祷の内容は、癌の手術をするため、手術が成功して完治するようにという願いだった。
よく耳にする願掛けだ。
ぺぺは終わってから神様に聞いた。
「神様ー。あの人のお願いは癌だから叶わないの?」
「いや。癌は治るものじゃぞ。あの者は、手術がうまく行けば完治するであろう」
そう言って神様は笑う。
「あの者の寿命がもう終わるのであれば叶えることは出来ぬが、まだ違うからのう」
「手術がうまくいかない場合もあるの?」
「あるよ。手術をする医者が体調が悪い場合や、誰かのミスのせいで命を落としたり、後遺症になったりする場合がある。そうならないようにするのもわしらの仕事でもあるのだよ」
「そうなんだ。死ぬのは病気になったからじゃないんだね」
「その者が産まれる前に計画してきた寿命に合わせて病気や事故になるのだよ」
神様はやさしくぺぺに話してくれた。
「人間の寿命はあっという間に終わる。だから悔いの残らない人生を送ってほしいものじゃ」
「じゃあぺぺも悔いの残らないようにいっぱい遊ぶね」
「ぺぺはしなくていいよ」
神様は笑顔で否定したのだった。
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