別日⑫ 



 妖精ぺぺは、ある山の上にある小さな神社に住んでいる。


 妖精なので、ほとんどの人間には見えない。



 ぺぺが本殿へ行くと、男性がお願い事をしていた。


 内容は、災害が起きませんように というものだった。


 ぺぺは昔、地震や台風が来て大きな被害があり、怖かったことを思い出した。


 神様に聞いて見た。


「神様、台風や地震が来ないように出来ないの?」


 来なければ被害も出ず、みんな嬉しいはずだ。


 だが神様は言う。


「それは出来ないのだよ」

「どうして?」

「自然の法則には、神だからといって関与は出来ないんだ。地震や台風が来なければいいというのは人間の都合だね。でもこの地球にとっては、それは必要なことなんだよ」

「そうなの?」

「そうだよ。人間が住みやすいようにいろいろ開拓がされているが、本当はしないほうが良い場所もある。まあ神社がそれだね」

「神社?」

「そうだよ。神社によってはその場所をさわらせないために建てられている場所もある。もしそこを開拓しようとすれば障りなどを起こし、断固拒否をしている」

「ふーん」

「だから台風や地震もそうだね。地震もこの日にくるとはわしらでも分からない。少し前しか分からないんだよ。だから止めることが出来ないから、被害を最小限に押さえる努力をその地区の神様達はしてるんだよ」

「そうなんだ」

「でもそうしても被害は出る。悲しいことじゃ」


 たまに、何故救ってくれなかったのだという参拝者が怒っているのをぺぺは見る。

 だが神様は怒っている参拝者の人にいつも謝っているのだ。


「神様頑張っているのに、伝わらないのは悲しいね」


 ぺぺが泣きながら言うと、神様はそんなことないよと言う。


「悲しみや怒りをぶつけてその者が楽になるなら、それでいいんだよ。悲しみや怒りをとってあげるのも大事だからのう」


 そう言って笑う神様が、ぺぺは大好きだ。


「神様、大好き!」


 と、ぺぺは神様の周りを飛ぶのだった。




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