58話 絵馬に願いを



 妖精ぺぺは、ある山の上にある小さな神社に住んでいる。


 妖精なので、ほとんどの人間には見えない。



 参拝者は、お願いごとを絵馬に書いて心願成就を願う。


 それを見たぺぺは、自分も書きたくなって神様に言った。


「神様、絵馬に願い事を書くと、願いを叶えてくれるんだよね?」

「絶対ではないよ」


「なんで?」

「みな、色々な経験をするために産まれてくる。その者にとって必要な修行の場合は、あえてその者の願いを叶えないこともある」


「そうなんだ」


「後、後ろの者(守護霊、指導霊)が叶えないでくれということもある」

「へー」


「病気とかは、寿命の場合は叶えれないのう」

「そっか。その他は大丈夫なんだね」


「まあだいたいな」


「じゃあ僕も願い事したいから絵馬に書きたい」


 ぺぺはそう言うと、目をきらきらさせて絵馬を取り何を書こうか考え始める。そんなぺぺに神様は笑顔で問う。


「ぺぺは何を願うのじゃ?」


「うんとねー。よく踏まれるから、踏まれないようにってお願いする」


 神様は笑顔のまま、ぺぺに言う。


「それは願わずとも気をつければいいことじゃ」

「えー。お願いすれば気をつけなくても大丈夫でしょ?」


 神様は笑顔のまま言う。


「ぺぺ。もう一つ言うのを忘れておった」


「?」


「楽して願いを叶えてもらおうとする者も叶えられない」


 そう言って神様はその場から消えた。


 残されたぺぺは、ただその場に立ち尽くすのだった。




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