別日⑧ 魂は覚えている



 妖精ぺぺは、ある山の上にある小さな神社に住んでいる。


 妖精なので、ほとんどの人間には見えない。



 今日もぺぺがいつものように参拝者を見ていると、初めて見る女性がやって来た。


 年配の女性は、


「はじめてだわ」


 と言って嬉しそうにキョロキョロして神社を見ていた。


 そして本殿にくると、手を合わせてお参りをしていた。


 それを見ていた神様は、


「よく来た。良く来た。久しぶりじゃのう」


 と声を掛けていた。


 でもぺぺは、その人を見るのは初めてだ。女性も初めてと言っていた。


 だから、教えてあげた。


「神様。この人、ここに来るの初めてだよ」


 と。


 すると神様は言う。


「この女性の人生では初めてでも、魂は何回も来ているんだよ」


 神様は、魂を見ているのだと言う。


「前は男性で、その前は女性だったのう。その女性の時に、ここの巫女をしておった」


 そうなんだとぺぺは驚く。


「前世で、ここに来ることが出来なかったから、今世は必ず私に会いに来ると決めてきたようじゃ」


 すると、女性は、なぜか本殿の前で涙を流し始めた。


「あれ。なぜ泣いているのかしら? 不思議ねえ」


 本人はなぜ泣いているのか分からないようだ。


 ぺぺの隣りにちいさな神様がやって来た。


「あの者の魂が、ここに来れたことを喜んでいるのだな」


 そこでぺぺも分かった。


 ああ、やっと念願が叶ったからだと。


 そしてぺぺは女性の周りをグルグル周り、


「よかったね。 よかったね」


 と何回も何回も言うのだった。



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