39日目 風の妖精



 妖精ぺぺは、ある山の上にある小さな神社に住んでいる。


 妖精なので、ほとんどの人間には見えない。



 ぺぺが本殿まで行こうと飛んでいると、風がびゅーっと吹いた。


 するとぺぺはコマさんの所――神社の入り口まで飛ばされた。


 その風から、「きゃははは」と聞こえる。


 その風は風の妖精の仕業だったようだ。


 ぺぺはまた本殿までの道をパタパタと飛ぶ。


 するとまた風が、びゅーと吹いた。


 ぺぺはまたしてもコマさんの所まで飛ばされた。


 こまさんが、


「ぺぺ。何をしておるんじゃ?」


 と不思議そうに言う。


 ただ飛ばされただけだとは言わずにまためげずに本殿へと向かう。


 やっと本殿まで来たところでまた、


 びゅー!


 飛ばされた。


 3回目になれば、これは風の妖精のいたずらだと分かる。


 こうなったら絶対に本殿まで行ってやるとぺぺは意気込む。


 そして、今度は全力疾走で飛ぶ。


 だがまた、びゅーっと飛ばされた。


 そして何回も何回も繰り返され、


 ちーん!


 ぺぺは力つき、地面にへたり込んだ。



 そんなぺぺを風の妖精は、本殿の神様のところまで運んだのだった。


 本殿で、倒れているぺぺに神様は、


「楽しそうに遊んでたのー」


 と笑った。


 「…………」


 反論する気力もないぺぺであった。



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