38日目 おまんじゅう



 妖精ぺぺは、ある山の上にある小さな神社に住んでいる。


 妖精なので、ほとんどの人間には見えない。



 ある日、おばあさんが神様にお供え物だとお酒と箱を持って来た。

 ぺぺ達妖精は、キラッと目を輝かせる。そしてヒソヒソと話し始めた。


「あの箱の中身は何だと思う?」

「あれは、せんべいでは?」

「いや、お砂糖では?」


 するとおばあさんは、箱を開けた。


 中身を見て、ぺぺ達は、「ひゃー!」 と喜ぶ。


 お饅頭だった。


「お饅頭だ! お饅頭だ!」


 ぺぺ達妖精は、神様をじっと見る。 


 神様は理由を分かっているので、はははと笑う。


 おばあさんは、お参りが終わると、お酒だけ置き、饅頭は持ち帰るため箱にしまう。その時、お饅頭が1つだけコロッと床に落ちた。でもおばあさんは気付かない。

 そしてそのままおばあさんは帰っていった。


 神様がわざと1つ落としてくれたのだ。


 ぺぺ達はお饅頭を 我先にと拾おうとした。


「僕が持つ!」

「私が持つ!」


 みんなお饅頭を持ちたくてしょうがない。そんなぺぺ達に神様は言う。


「みんな仲良くしなさい。 思いやりも必要じゃぞ」 と。


 でもぺぺ達の耳には入らない。


 すると、もめ始め取っ組み合いの喧嘩のようになった。

 そんなぺぺ達の横を野良猫が通り過ぎた。


 そして、


 ぱく!


 饅頭を食べて、そのまま何事もなかったように去って行った。


「…………」


 ぺぺ達は、そのまま立ち尽くし、ゆっくり神様を見た。


 神様はそのままくるっと踵を返すと、帰って行ったのだった。

 残されたぺぺ達は、


「お饅頭ー……」


 と泣くのだった。



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