別日⑥ その子にあった場所
妖精ぺぺは、ある山の上にある小さな神社に住んでいる。
妖精なので、ほとんどの人間には見えない。
ある日、何年かぶりに1人の男性がやって来た。
男性は学生の頃よく来ていた子だ。
ぺぺは、思い出す。
男性はその頃よく神社に合格祈願に来ていた。
ある有名高校に合格したかったためだ。
いわゆる神頼みというやつだ。
よく合格祈願にくる学生は多い。
神様はうんうんとだいたいの子の願いは聞いてあげていた。
だが、その男の子の合格願いは、聞いてあげなかった。
ぺぺは神様に言う。
「なぜ聞いてあげないの? かわいそうだよ」
神様は言う。
「ぺぺ。誰しもその子にあった人生がある。あの子にはあの高校は合わないのだよ」
男の子が希望した学校は、男の子のレベルよりも高い学校だった。
「あの子は、希望する高校へ行くのも目標だけど、その先、本当に行きたい大学があるんだよ」
「うんうん」
「その高校は、あの子が行きたい大学にたくさん受かっているんだ。だから行きたいみたいなんだ」
「じゃあ願いをきいてあげて」
「でもね。その高校はあの子には合わないんだよ」
「え?」
「あの子にはもっとあった高校があるんだよ」
と言って神様は笑う。
その時ぺぺは意味が分からなかった。
でも、今日男性の神様に言った言葉で納得した。
男性はこう言った。
「神様、あの時はあの高校を落としてくれてありがとう。○○学校に行ってよかったです。すごく僕にあった学校だった。そして念願の○○大学に行くことが出来ました。多分、希望していた高校に行っていたらついて行けなかった」
とお礼を言った。そして、
「またよろしくお願いします」
と笑顔で帰って行った。
そんな男性を神様は、うんうんと笑顔で見送った。
ぺぺは、
「よかった。さすが神様」
と言うと、神様は首をふる。
「私はきっかけを作っただけだよ。合格したのはあの子の努力だよ」と。
「だから、ぺぺもちゃんと努力しないさい」
「うん。 神様の眷属になれるようにがんばる」
ぺぺは拳をにぎり元気よく言うと、神様は即答した。
「しなくていいよ」
「………………え? なぜ?」
ぺぺの質問には答えず、笑顔で神様は帰って行った。
ぺぺは固まるのだった。
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