別日⑤ 寿命は変えられない



 妖精ぺぺは、ある山の上にある小さな神社に住んでいる。


 妖精なので、ほとんどの人間には見えない。



 いつものようにぺぺは参拝者が来るのを楽しみにしている。


 すると、朝早く一人の年配の男の人がやって来た。


 男性は本殿で手を合わせると、ずっと神様にお願い事をしていた。


 実は男性はここずっと毎日のように来ている。


 その理由はぺぺは分かっている。


 だからぺぺは神様にお願いする。


「神様、おじさんのお願い聞いてあげて」と。


 だが神様は、首を横に振る。


「それは無理なんだよ」


 男性の願いは奥さんの病気が治りますようにという願いだった。

 何故聞いてあげないのかぺぺは悲しくなった。


 神様は言う。


「奥さんは寿命なんだよ。寿命は私でも変えることが出来ないのだよ」


 ぺぺはそうなんだと悲しくなり涙する。


 おじさんはきっと泣くだろう。悲しむだろう。


 神様はそんなぺぺに言う。


「だから奥さんが最後苦しまないように、そして男性が少しでも悲しみが軽くなるように助けてあげようね」


 ぺぺは、うんうんと涙目で頷いた。


 ぺぺは、泣きながらおじさんの横に寄り添うのだった。



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