別日④ 雨を降らせる訳
妖精ぺぺは、ある山の上にある小さな神社に住んでいる。
妖精なので、ほとんどの人間には見えない。
今日は、少し雨が降っている。
空に龍が泳いでいる。雨を降らしているのは龍のようだ。
1人の女性が参拝にやって来た。
いつも参拝に来るよく知っている女性だ。
女性は階段を上りながら、神様に雨が止むようにお願いしている。
やはり参拝の時は、雨は嫌な人が多いのだ。
神様はちゃんと聞いていたので、雨を止ませるものだとぺぺは思っていた。
龍に言えばすぐ止むはずだ。
でも神様は、反対に雨をもう少し止まないように龍に頼んでいた。
何故、女性の願いを聞いてあげないのかとぺぺは不思議だった。
いつも女性は神様に近況報告をしていた。
この日も色々お話をしていたみたいだ。
すると女性は話ながら涙を流し始めた。
参拝客が後から何人かやって来ていた。
女性は泣いているところを他の人に見られないように傘で隠した。
でもその場から離れない。
まだ神様に話を聞いてほしかったからだ。
そこでぺぺは気付いた。
ああ、雨を止ませなかったのは、女性の涙を傘で隠すためだったのだと。
神様はそれを分かっていたのだ。
女性が泣くだろうと。
神様は言う。
「泣くことで、少しは心が楽になるであろう。また前を向いて行けるだろう」と。
女性は神様にお礼を言い、すっきりした顔で帰って行った。
もうそのころには、雨は止んでいた。
神様は微笑む。
「今度は、笑顔で参拝においで」と。
ぺぺも、女性の背中にむかって言う。
「がんばってね」と。
空は、青空が広がっていたのだった。
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