12日目 カタツムリ



 妖精ぺぺは、ある山の上にある小さな神社に住んでいる。


 妖精なので、ほとんどの人間には見えない。




 ある日、カタツムリがゆっくりと移動していた。


 ぺぺはカタツムリに、どこへ行くのか聞いた。


 すると、カタツムリは、向こう側にある花に移動するのだと言う。


 ぺぺは、ゆっくりゆっくり、のっそりのっそり動くカタツムリを

 じーっと見て応援する。


 「がんばれ! がんばれ! あと少し」


 どれくらい応援したであろう。


 カタツムリは、かなりの時間をかけて境内の砂利道を移動していた。


 あと少しとなった時、住職さんがやって来てカタツムリを見つけた。


 「こんな所にいたら踏まれてしまうよ」


 そう言ってカタツムリを持ち、元いた場所の葉っぱに乗せた。


「……」


「……」


 カタツムリもぺぺもただ唖然とする。


 そして、


 この移動時間を、この応援の時間を返してほしい


 と思うのであった。



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