赤い野菜と緑の野菜

鹿嶋 雲丹

第1話 赤い野菜と緑の野菜

赤い野菜ぼくが生まれたのは、緑の野菜なかまの中だった。


先に生まれた野菜なかまも、同じ時期に生まれた野菜なかまも、後から生まれた野菜なかまも、みんな緑色。


それなのに、なぜだか僕だけが、ぽつんと目立つ赤い色をしているんだ。


どうしてなんだろう?


土の栄養?


水の成分?


お日様の光のあたり具合なのかな?


そんな問いを自分に向けている内にも、仲間は次々と旅立っていく。


僕はどんどん焦り、くらくらと落込んでいく。


赤いから。


皆と違う色をしてるから。


だから、僕はダメなんだ。


きっとこのまま腐って終わるんだ。


僕の赤い色は段々と鮮やかさを失って、どす黒くなっていく。


そんなある日、ピカピカに光った僕の仲間が言ったんだ。


あら、あなた素敵な赤い色をしているのね。


って。


僕は耳を疑ったよ。


素敵? なにかの間違いじゃありませんか?


素敵じゃない、私は赤い色大好きよ。真っ赤に焼ける夕焼けの色だもの!


好きと言ってくれてありがとう。でも、僕は皆と同じ緑色が良かったんだ。僕一人だけがこんな色をしているから、いつまでも旅立てずにここにいるんだ。


私達が旅立つ先や時期なんて、自分じゃ決められないものでしょう? それに、その理由だって、そんなに重要かしら?

あなたは素敵。それだけで十分じゃない?


ピカピカに光る仲間は、にこりと笑った。


僕が、素敵?


素敵よ。とっても。誰かに教えてもらわないと、自分自身のことってよくわからなかったりするのよね。私だって、そう。周りの皆と同じ緑色のお野菜よ。ただ、それだけ。


そんなことありません、あなたはきれいです! ピカピカでつやつやで、とても栄養がありそうに見えます! とても魅力的です!


あらそう? 嬉しいわ、そう言ってもらえて……体の色や味が違っても、似た部分はあるからわかり合えるわね、私達。


あなたもいつか、ここから旅立ってしまうんだよね? ずっと僕の隣にいてほしいけれど。


そうね。旅立つのは、私じゃなくてあなたかもしれないわ。その前に会えて良かったわね! 離れた場所で生まれていたり、気がつかなければこうはならなかったもの。


ありがとう。僕、嬉しかった。


ありがとう。赤いあなたに会えて、私も嬉しかった。


沈むお日様の光を受けて、僕も周りの皆も赤い夕焼け色に染まる。


その光は、今まで浴びたどんな光よりも心地よいものだった。


僕はうっとりと思う。


赤くてもいい。赤くて良かった。


僕の体が赤くなければ、あのピカピカの仲間とお話ができなかったもの。


嬉しい。ありがとう。僕の赤い体。

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赤い野菜と緑の野菜 鹿嶋 雲丹 @uni888

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