第5話
開いたままで固定されていた扉の中に入ってみると、いくつかの机で手続きをしている人や、何人かの組になって説明を受ける人の姿があった。
「マリー、これってどこに行けばいいの?」
「あらまあ。三人とも冒険者の仮登録での手続きですから、目の前にある特設窓口、あの長机のところで登録と講義の申し込みの手続きをしてもらえばいいようですね。」
妹の疑問の声に周りを見れば、マリーの言う通り正面に《特設窓口 仮登録手続きはこちら》と書かれた横断幕らしきものを背景に、長机を一列に並べて職員の制服を着た人が数人座っていた。
「母さん、誰に手続きたのむの?」
「そうねぇ。フレッドや坊ちゃま方は、十歳の新入枠での仮登録になるからきちんと説明して下さって色々な経験を積んだ方が良いのだけれど、そういう方は遠方出身者や特別な理由から仮登録時期が遅れそうな人、または大人で仮登録する人たちなどの少し難しい手続きをするために別の窓口ですし・・・」
正面の特設窓口の方へ向かいながらマリーの説明を聞く。
「まあ、この時期の十歳の仮登録なら毎年の事ですしそんなに説明に差はないと解っていても、親心としてはなるべく慣れた方にと思ってしまいますね・・・あら?・・・三人ともあちらの窓口にしますよ。」
悩んでいたマリーが何かに気づいて、何気ないふりをしながら足早に僕らを連れて窓口の一つに向かった。
窓口に着くと、ちょうど前の人の手続きが終わるのが一緒くらいだった。
「うーぃ。次のひとぉー。」
「ちょっと、リスリさん。僕がいなくてもちゃんとしてくださいよ。」
前の人は、お待たせしましたーなんて言われながら、真面目そうな職員と別の窓口の方へ向かっていった。
残ったのは、ぼくらともふもふの尻尾が頭の高さまである何だかだるーんとした雰囲気の獣人の職員が一人。
大丈夫なんだろうか。不安になりながらも机の前に置かれた椅子に座った。
「お待たせ致しました。本日担当いたします。リスリと申します。仮登録後の講義で、一般教養と神殿学の講師を務めさせていただいております。よろしくお願いいたします。」
差、この差、ある意味すごい。
でも、この様子だと大丈夫そうだ。
廻り巡る世界で 松田一慶 @cyokona
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