第4話

なんとかマリーを宥めて、乗合馬車でやって来た中央区は多くの人で賑わっていた。


 「わぁー。賑わってるねー。」


 「あらまあ。朝早い時間ですからね。人が多くなるのは、これからですよ。

 この時期の今の時間帯は、遠方から来た者たちなどが多く、これでも人の数は少ない方なのです。

 とは言ってもいつもより人が多いのは事実ですので、坊ちゃまとフレッドも近くに来てくださいね。」


 マリーの言葉に従ってから、改めて周りを見れば、確かに見慣れない服装の人が多い。


 「さあさあ。本格的に人が多くなる前に申し込みをしに行きましょう。

 総合支部はこちらですよ。三人ともはぐれない様に。」


 賑わう通りを三人でマリーの後を追っていくと、大型馬車が余裕を持ってすれ違える程の道が真ん中に通り、両脇は沢山の露店が連なる縦の格子で囲われた大きな芝生の広場に着いた。広場の奥には時計が付いた背の高い建物を中心に山の字状に大きな建物と通路があり、さらに左右の端に巨大な倉庫らしきものがあった。


 「ここが総合支部?広ーい。」


 「あっ、ここも人が多いんだから、母さんからはなれるなよ?」


  「マリー、手続きはどこでするの?」


 「真ん中の時計がついた建物の中ですよ。

 ほらほら、三人ともこちらですよ。」


 真ん中の建物の中央には道の幅と同じ位のかなり大きな両開きの扉が、その左右に大人の男性三人分ほどのこれも両開きの扉が付いていて、真ん中の建物の左側にある扉に向かうマリーの後を、三人で追いかけるように歩く。

 広場の入口から建物までかなりの距離がある。

 実際に建物が見えてくると、なんだか僕まで総合支部に行くのが楽しみになってきたようだ。

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