第2話
一階へ降りると、マリーが朝食を作り終えたところだった。
昔から父は仕事で家にいない時間が多く、朝食は僕ら兄妹と隣人のマリー、フレッド親子の四人で食事をとることが多い。
もっとも、最近フレッドは養母であるマリーに頼まれて、養父の職場に寄ってから来るので別々になることもある。
父に拾われてから、もう一人の兄弟の様に過ごしていた分、その違いが寂しく感じる。
まあ朝食後には、必ず我が家に来ているのだけども。
「おはよう。マリー。」
僅かに感じた心細さの様なものを振り払うように声をかけた。
「あらまあ、おはようございます。坊ちゃま。」
「坊ちゃまはやめてよ、マリー。」
こちらへ振り返り朗らかに笑う姿はどこかほっとさせるが、その呼び方はいただけない。
「あらまあ、何を仰るのです。わたくしにとって坊ちゃまは、坊ちゃまですのでそうお呼びしているにすぎません。
だいたい、正式にお手伝いさんとしてわたくしは雇われてもいるのですから、ある程度は敬った言い方でないといけません。
坊ちゃまもいい加減慣れてくださいな。」
「・・・」
さすがマリー、赤ん坊のころから知っているだけあってこちらが不利だ。
「おはよう。また母さんに言いくるめられたのか?」
「おはよう、フレッド。別に言いくるめられた訳じゃない。」
マリーに言い返せないでいると、裏口からいい匂いのする荷物を抱えたフレッドが苦笑しながらやって来た。
「あ、お兄ちゃん。今日は久しぶりにフレッドも一緒の朝食だよ。」
フレッドのために裏口を開けに行ってたのだろう妹が、ニコニコしながらフレッドの後ろから顔をだした。
「久しぶりってほど、間は空いてないと思うけどなぁ。あっ母さんこれ頼まれていたパンだけど。」
「あらまあ、ありがとう。さぁさぁ坊ちゃま方も席についてください。朝食にしましょう。」
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