17歳の誕生日

お姉ちゃんとは連絡のやり取りをしていたが、今どこで何をしてるのかは内緒にしてた。ただ「友達の家でちょっとお世話になってる」と一言伝えた。

お姉ちゃんは私とお兄ちゃんが付き合っていたのを知らない。だから、何事もなく、お兄ちゃんの試験合格の知らせを、先生との再会の次の日に、メールで教えてくれた。とても嬉しかった。傍にいてあげて「おめでとう」と言ってあげられないのが、とても苦しかった。

昼間は先生は仕事に出かけてて、私も学校へはちゃんと行っていた。先生は私を自分の欲は発散する為の道具のように、毎晩私を抱く。もうお兄ちゃんとのことなんて、忘れて、快感に溺れている自分がいることが、独り部屋にいる時に虚しさがあった。「お兄ちゃんに会いたい」どんなに先生に抱かれて、快感があっても、やはり好きな人ではないから、気持ちが冷める。シャワー浴びるたびに泣いてる自分がいる。

どうして、こんな方法しかなかったんだろう。そう自分を戒めながら過ごしてたら、自分の誕生日の日が来た。

17歳の誕生日…、本当はお兄ちゃんと約束してた。デートをする約束でいた。なのに、私はお兄ちゃんの傍にいない。先生は今日も仕事だった。私は学校に行く気分になれなくて、サボって、こっそりお兄ちゃんの家の前に行ってしまった。

大学を卒業し、試験にも合格したお兄ちゃんは、実家を出て、一人暮らしを始めるという事をお姉ちゃんから聞いていた。住所もその時に送られてた。

「ちょっと見かけるだけ…」そう思いながら、電車に揺られ、家の前に着いた。「…ここにお兄ちゃんがいるんだ…。元気にしてるかな?」上を見上げているのに、涙がポロポロ頬を流れた…。お兄ちゃんと初めて会ってから、ずっと大好きで、でも、お姉ちゃんと付き合うことになって、諦めた恋で、その諦めの気持ちから、先生との関係を作ってしまった。でも、お兄ちゃんは助けてくれて、私を受け止めてくれて、両思いになれた。なのに…自分から、その幸せを手放すなんて…。なんて、私は大馬鹿なんだろ…。

しゃがみ込んで泣いていたら、上からそっと頭を撫でられていた。そっと上を見上げると、そこには愛おしい姿が…。「どうして…」「あいつが、“家に帰ってこないから、そっちに行くかも”って連絡あってさ。ちょうど家に用があって帰ってきたら、お前がいたから。すごい心配したんだぞ?今までどこに…」

お兄ちゃんが喋ってる途中でたまらず、抱きしめて泣いていた。それ以上何も言わずにぎゅっと抱きしめてくれた優しさが愛おしかった。

部屋に通され、私は泣いた目で周りを見渡していた。大きな本棚には難しそうな本が並んでいた。そして、近くにはデスクが。ここでお兄ちゃんは過ごしてるんだ。そう思いながら、なんか、隣に住んでた時の部屋とは雰囲気が違って、ちょっと特別な気がしてた。

そっとデスクの側に近寄ったら、写真立てがあって、そこにはいつの間に撮られたのか、私の寝顔が飾られていた。

「これ…」後ろからぎゅっとされて、ビックリした。お兄ちゃんが今までで聞いたことのない心細い声で囁いた。

「お前がいなくなったって聞いて、せっかく頑張った試験も合格って聞いてもオチ使ったし、普通に喜べなかった。お前がいなくて寂しかった…」「おにい…」呼ぶ前に唇を塞がれた。何ヶ月ぶりのキスだろう。しかも、こんな優しいキス…。私はまた涙が止まらなかった。

「…んせいのところにいたの…」キスの後、私は今にも消えそうな声で、彼に伝えた。「先生のところにいたの…。2年前、恥ずかしい写真撮られててて、それを今でも脅されて…。警察にも言ったんだけど、信じてもらなくて、そのまま…」彼は怒りで壁を叩いた。私は自分に対して、怒っているのかと思い、恐怖感にあったが、すぐに抱きしめられて、「…なんで、そんな大事なこと言ってくれなかったんだよ…俺って、そんなに頼りないか?」彼の肩が震えていた。そして、肩越しに伝わってくる雫の感触。お兄ちゃんは泣いていたのだ。「…ごめんなさい。お姉ちゃんにもお兄ちゃんにも迷惑かけたくなくて…。自分でやったことだから、自分でどうにかしなきゃって…」

そしたら、ふっと笑いながら、お兄ちゃんは私の頭をクシャクシャにして、寂しそうに笑って、「頼れよ。俺のこと…。お前の彼氏だろ…」今まで堪えていた涙が溢れ出して、もう高校生なのに、子供のように泣いていた。思う存分泣き止んでから、私は放心状態になってた所に、甘い匂いがした。

そして、目の前に出されたケーキ。「お前、今日誕生日だろ?どうしてもお前を探し出して、祝おうと思ってたんだ。お前の17歳の誕生日」

「…りがとう。お兄ちゃん」「ん、食べて、お前の問題を解決する手段を話し合おうか」

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