知らない田舎の出汁の効いた料理を食べた心持ちになりました。狸が青春と野球に極まった愛らしさをもたらしています。これを読む人全員が狸が手紙をしたためている様子をきちんと想像してほしい。実は私、狸大好きなんです。だからこそ贔屓にならないように狸には目を瞑って読んだんですが無駄でした。閉じた瞼の裏にも狸がいました。私は何を言っているんでしょうか。とにかく美味しかったです。ごちそうさまです。
狸の奥深さを楽しみました。化けるというコンセプト、可能性が無限大。それから、ひさびさに野球って面白いスポーツだなあと思いました。
人間以上に人間らしくて初々しい少年(タヌキ)の青春がギュッと詰まってます。高校野球の試合描写や選手、監督とのやり取りも丁寧で、まるで中継を見ているような鮮やかな情景が浮かびます。そして、「とある事情」で人間に扮している主人公の葛藤と高揚感と人懐っこさが、とにかく可愛らしいです。ほっこりと懐かしさを感じる筆致も心地よくて、読後、とても穏やかな気分になる作品です。