歩いて
夜猫子
歩く
歩く
傘をさして
雨も降ってないのに
歩く
歩く
あてもなく
地図もない
気の赴くままに
なんとなく
風にあおられて傘が持ち上がる
空を見上げてみる
傘越しに見る空は水面のようにゆらゆらして
不安定に張りつめている
太陽の光も乱反射する
傘を閉じて空を見上げる
ただまっすぐに光が降り注ぐ
迷いなく
私の眼はその光に焼かれて
涙が溢れる
光は不安定に乱反射する
傘もさしてないのに
前を見つめる
涙が零れる
視界は不安定なままで
先がよく見えない
歩き出せないまま時が過ぎて
いつしか歩き方も忘れて
歩いていた理由も失くした
私は座り込んで
頬杖をついてみる
まばたきを繰り返して
視界が定まるのを待っている
やがて涙は枯れて
道が見えるようになった
でもまだ歩き方も歩く意味も
見つからないまま
日が暮れてきて
風は夜が近いことを知らせる
私は何も見つけられないまま
閉じた傘を杖代わりに
歩く
歩く
あてもなく
地図もなく
気の赴くままに
なんとなく
歩いて 夜猫子 @yoruninetai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます