日本村で、仲間との憩い

 俺が住んでいるのは東北のとある日本村だ。

 自然は豊かで、土と水が良いから、米と野菜はかなり育つ。

 町の至るところにある田んぼのほとんどは、外国の企業が買っているので、そこには仲間の作る田んぼはない。


 仲間の作る田んぼは、山にある。

 あとは、山のふもとだったり、虫が普通の田んぼより多くて、他の人が近づかない場所に多い。

 何より、悪路なので非常に機会が入りにくいのだ。


 春先には皆で米を作るために種まきを手伝ったり、苗箱を並べたり、ちょっとしたイベントみたいになっている。


 畑は広く、近くで川が流れているので雑草がヤバすぎる。

 だけど、関西に負けず劣らず、野菜が良く育つのだ。


 そんな俺の住む日本村の場所は、地方都市から山に向かっていき、林道を抜けた先にある。


 元は宗教施設か何かだったのだろう。

 改装して使える場所はそのまま使っているし、住み心地は良い。


 両脇を林に囲まれた入り口を抜けると、アパートが左右に三棟ずつ並んでいる。

 奥にも同様な並びで、三棟ずつ建てられている。

 最奥には、皆で作っている広い畑があるといった感じだ。

 農具を置く小屋などは、畑と隣接しているので、そこから鍬などを持ってきて、畑を耕し、種を植えるのだ。


 俺が住んでいる部屋は、入り口を抜けて、すぐ『左手にある棟』だ。

 階段を上がって、すぐの場所に部屋がある。


 部屋の扉を開けて、カバンを放り投げると、俺は隣の部屋に向かった。


 ノックをすると、「はーい」とダルそうな声が聞こえてくる。


「おう。帰ったわ」

「はいはい」


 扉を開ける前に、ポケットから封筒を取り出し、素早く一万円だけを抜く。

 そして、ポケットに入れ直し、扉が開いたところで片手を挙げる。


「うーい」

「遅かったね」


 仲間の一人で、友達の摩耶まやが半開きのドアから顔を覗かせる。

 赤髪のショートカットで、ゴツいピアスやアクセサリーを身につけた女の子だ。

 いつも眠そうな目をしていて、食事もあまり食べないので、たまに心配になるほど細い体をしている。


 本人は単に小食なだけと言っているので、たぶん大丈夫だろうけど。


元志げんじきてるよ。入って」


 ドアを持ち、中に入る。

 六畳半ほど広さをした部屋。

 ドアを開けた先に、台所があって、向かいはトイレ。

 風呂は公衆浴場になっているので、別の場所。


 オレは靴を脱いで、奥の部屋に歩いていく。

 すると、ソファでだらしない顔をしたデブが、欠伸をしながらノートパソコンでゲームをしていた。


「テストプレイ?」

「そうそう。マジで失敗したわぁ。くっそ。長いなぁ」


 ギョロギョロした目つきが特徴の小柄なデブ。

 これが元志だ。

 こいつは、実のところゲームをやる事は多いが遊んでいるわけではない。


 俺と同じで、17歳だけど大人に頼らず、自分で資金を作るためにゲームの開発を行っている。

 ゲームに必要な絵とか、音楽、細かいシステムなどは、他の仲間に頼むことも多い。が、基本的にゲーム自体は一人で創るのがほとんどだ。

 たまに、ネットを介して他の仲間と作る事もあるらしいが、実際の所は俺もよく分かっていない。


「あのさ。これ見てよ」


 俺は早速、ポケットから封筒を取り出す。


「俺はさっき使っちまったからさ。お前らにやるよ」


 そして、四万を分けて二人に渡した。


「い、いや悪いって」

「いいんだよ。使ってくれ。つうか、俺はこんなもんなくったって、生活に困ってねえし」


 悪い奴を演じながら言ってやると、摩耶が気だるげに寄りかかってきて、「んじゃ遠慮なく」と貰った。

 それに続いて元志は残りの二万を貰う。


「俺はお前らみたいに何か作れるわけじゃないからさ。ぶっちゃけ、物作りに貢献したいわけよ。だから、今作ってるもん出来たら、俺にも恵みをくれよ。へへ」

「それが狙いかよ。ったく」

「んー……、考えとく」

「あ、そうだ。それ、電子マネーに両替すんなってさ。そこだけ注意な」

「うっげ! 資金洗浄してねえ金かよ」

「じゃあ、サプリメントとか、種とか、肥料に使っちゃおうか」


 二人は早速使い道を決めていた。

 

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