2027年の日本

 一昔前の日本人には信じられないかもしれないけど、2027年になった今、日本と呼べる国はない。


 今、俺が生きている土地は、『管理区域日本特区』となっている。


 首都の東京は災害に見舞われて崩壊。

 だけど、不思議なのは、事。

 俺一人だけじゃない。

 皆が一様に記憶がないのだ。


 東京への出入りは禁止されていて、例えば東北から関西に行くときは、東京の周辺を迂回する形で行かなければいけない。

 なので、東京より西側からは、なかなか荷物が届かない。

 治安が悪化していることもあり、荷物がそのまま盗まれる事だってザラにある。


 日本人の人口は、テレビの調べによると、2万人に減少しているとのこと。

 嘘か本当か分からないグラフで、外国人のキャスターが説明していた。

 八割が外国人。残りの二割が日本人。


 全国各地で、散らばって住んでいる日本人のことなど、現在生きている人間にとっては、どうでもいいことだろう。


 個人で住んでいる人達がいる中、俺みたいに『日本村』の様なものを作って、一塊になっているやつらもいる。

 正直な話、まとまっていないと、治安悪化の影響ですぐに殺されたり、生きていく事だって困難だ。


 想像してみてほしい。

 一人暮らしで、家に一人でいるとき、見知らぬ男が何食わぬ顔で窓から侵入してきて、いきなり手に持った鈍器で殴りつけてくるのだ。

 それが女の身だったら、胸糞悪すぎて言葉にできない。


 これが当たり前になっているのが、現在の日本である。


 加えて、仕事をするのだって楽じゃない。


 俺みたいに、マイクロチップを埋め込んでいない人は、外国語ができないと就職ができず、バイトすらできない。


 だからこその日本村だ。

 一つの場所に集まって、金を出し合って土地を買って、アパートみたいに部屋がたくさんある建物をいくつも建てて、皆で生活する。

 ニートはいても、怠け者はいない。


 野菜や果物だって、自分達で作って食べている。

 水はトイレや風呂以外では、蛇口の水は使わずに、井戸の水を汲んで飲んでいる。

 蜂蜜、酪農、全部自分たちでやって、自分達で消費している。


 日本村というのは、いわば『リアルにおける生活コミュニティ』である。


 こうなる前に、何とかならなかったのか?

 それは分からない。


 ただ、大人曰く、外国は憎くても、一番悪いのは何もしなかった『国民じぶんたち』らしい。


 まとめると、『日本は変わった』のだ。

 何もかもが変わって、色々な事がとんでもなくて、叫びたい時はたくさんあるけど、俺は一つだけ言いたい。


 俺や俺の仲間は絶望していない。


 関西は血の気が多い人がたくさんいて、かなり気合の入った活動をしている。

 酪農だって、関西の方でやっているのだ。

 九州はもっと血の気が多くて、治安の悪化など気にも留めていない。

 魚介類は四国と合わせて、そこから千葉の辺りまで運んでくれる。

 東北では、米や麦、蜂蜜などを西側の人達に届けている。


 物々交換が超重要なのだ。

 一通り各地で作れるが、産地による美味しさや数には限りがある。


 それにテレビに依存しない情報だってくれる。


 俺たちは、そうやって力強く生きている。


 誤解しないように言っておくなら、外国の人間だって、良い人はたくさんいる。

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