【ズバリ的中!】根拠のない占いはなぜ当たるのか?

エテルナ(旧おむすびころりん丸)

【ズバリ的中!】根拠のない占いはなぜ当たるのか?

占いは根拠に欠け信憑性に乏しい。ゆえに信じ難い。


そう思われる方もいるでしょうが、現実は血液型、星座、姓名、手相など、多種に渡る占いは衰えることのない人気コンテンツであり、市場規模も1兆円と驚愕の値です。

単に楽しむ為だとか、己で決められない行動指針を他人に決めてもらいたい程度のユーザーもいるでしょう。

しかし中には当然、占いを信じている人もいます。なぜ信じるか、それは占いが的中した瞬間を体験したという経験論によるところが大きいのではないでしょうか。


【どうして根拠のない占いは的中するのでしょう?】


そこには人間の心理を利用した巧みな技術があり、一つに『バーナム効果』があります。

バーナム効果とは、誰にでも当てはまる事柄をさも個人やグループに当てはまるように認識してしまう効果です。

以下がバーナム効果の例文です。


・がさつな面はあるが、やるときはやる。

・社交的な会話はこなせるが、真に想いを打ち明けられる友達は少ない

・表向きには出さないが、一人でいると不安や寂しさに駆られることがある

・過去に苦い経験をしたが克服した、若しくは克服したいと思ってる

・普段は社会的だが、時折感情を抑えきれなく時がある。

・余計なところまで首をつっこんで、後悔することがある


いかがでしょう?

自己に当てはめれば確かにと思う反面、誰にでも当てはまりそうなことに思えませんか?

ネットや雑誌に載っている大衆向けの占いは特に、このバーナム効果が多用されています。


対面で話す占い師はこの他にも、外見や何気ない話題からヒントを得て、相手のことを言い当てる、コールド・リーディングを使用します。

挙動を見れば社交的か人見知りかは素人目にも分かりますし、少し学べば不安や安堵、嘘を吐く仕種なども分かります。

さらに具体的な事例で言えば、左手の薬指にリング状の日焼け痕が残っていれば、今は結婚指輪を外した状態であり、婚姻関係の破綻や問題を抱えている可能性を予想できます。


そもそも占いに来る以上、客はなんらかの悩みを抱えており、誰かに話したい衝動に駆られています。

一聞けば十答えてくれる、非常に情報を引き出しやすい状態にあります。

これは不満や苦痛を人に話すことで安心感を得られるという、カタルシス効果に由来します。

ここに更に『知人に相談しにくい』問題要素が加わると、言えないことほど言いたくなるカリギュラ効果まで影響し、ありとあらゆるヒントを占い師に提供することになります。


またコールド・リーディングとは別に、事前に相手の情報を知っていて言い当てる技法はホット・リーディングといいます。


占い師はざっとこれらの技術を巧みに使いますが、しかしこれだけでは解明できない占い結果もあります。それが予言です。



【一次のカオス系予言の当て方】


占い師は個人の将来を予想したり、果ては自然災害まで予言します。どちらも同じ予言に見えますが、この二つには明確な違いがあります。

それは予言の影響が出ない一次のカオス系か、予言の影響が出る二次のカオス系かという点です。


一次のカオス系の予言は簡単です。『何か』を暗に示す言葉や文面や映像を、ありとあらゆるところに残せばよいだけです。

その内のいずれかが『それっぽく的中』すれば、一次のカオス系予言が成り立ちます。外れた場合は信用を喪失しそうですが、しかし事実は何かしらの事由でこじつけできます。


例えば地震。

日本は地震大国で、震度1以上の有感地震は年間に1000~2000回発生します。均せば一日3~5回の体に感じる地震が発生しているということです。

ということはむしろ、地震が無い日を言い当てる方が難しい。また地震などでなく『災い』という表現をしようものなら、更には日本に限定しない物言いならば、これもやはり不幸の無い日を言い当てる方が難しいでしょう。


そして幾多の予言の中に、大きな災害との関係性を示せるものがあれば、晴れて予言は大予言へと昇格します。


また百発百中の予言は確率的にも厳しいですが、十発十中の予言者ならば1000人の犠牲の下に1人生み出せます。

円や株価などの上下二択の試行ならば、半数ずつに振り分ければ良いのです。


1024人の内の半数には『上がる』と予言し、残りの半数には『下がる』と予言する→512人の内、半数に『上がる』と予言し、残りの半数には『下がる』と予言する→256人の内……

これを繰り返した場合、残った一人の視点だけで見れば、外れることのない予言者に見えるでしょう。(実際は3・4回の試行で信頼に足るでしょう)


※念のため、一次のカオス系もバタフライ効果での影響はあります。バタフライ効果は風が吹けば桶屋が儲かるみたいなものです。


【二次のカオス系予言の当て方】


少人数では動かし難い災害や巨大な市場と異なり、個人への予言の場合は、後の行動で未来が大幅に変わります。そして未来への行動選択肢は二択に比べてはるかに多く、的中は困難のように思えます。

しかし二次のカオス系の場合は、むしろその性質を利用して予言を的中させることができます。これを『自己成就予言』といいます。

意識的か無意識的かに関わらず、客は予言に沿った方向に行動してしまい、結果的に予言通りの顛末を迎えやすくなるのです。


・三か月以内に恋人ができると予言

 恋人を作る姿勢が積極的になる

 化粧や美容に励む

 前向きになり表情が明るくなる→魅力的になる


・子供が〇〇大学に受かると予言

 積極的に教材を買い与える

 〇〇大学を目指すよう親が期待を寄せることで子供が頑張る(ピグマリオン効果)


目標は明確にした方が達成しやすいことは誰でも分かります。

占い師はただそれを実行させてあげているだけなのです。



加えて人間は得より損を気にする生き物です。

これには現状維持バイアスが働きます。


「お金を支払ってまで占いをしたのに的中しなかった」


金を払えば何かを得られるというのが本来であり、上記のように矛盾した状態にいることを認知的不協和といいます。

そして人はこの認知的不協和を無意識の内に解消しようと試みます。


『儲けるつもりのギャンブルで負けた』という矛盾を抱えた例

競馬・競艇→レースを楽しめたのだからと納得する

パチンコ→演出を楽しむ為にやっている

宝くじ→夢を買った


人はこうして、損害に理由を付けて納得させようとするのです。

その理由は占い師が駄目だったからという『外れた理由』ではなく、あくまで損失をしてしまった理由です。

よってその理由の内容は――


・何かしら別の部分で当たっていた

・見方を変えれば当たっているかもしれない


などなど、占いを持ち上げる方向に働きます。

金を払ったのだから、相当する価値を無理にでも見出そうとするのです。


上記の他にも、外れた占いは取り沙汰されず、当たった占いだけが話題となり大きく拡散されるという、敗者の意見は抹殺される生存者バイアス的な要因が信憑性を増しているとも言えます。

『〇〇だ』と言われると〇〇の部分のしか見えなくなる確証バイアスも占い師は利用してます。A型と言われると、その相手の几帳面な部分ばかりを見てしまい、一層A型っぽく見えてしまうような効果です。

これは己にも働き、A型の人間はA型っぽく動いてしまい、根拠のない血液型診断の性格が後天的に影響してしまうのです。



【占いは奥深い】

これらの理由付けを見て、あなたはどう思いますか?

残念に思う方もいるかもしれませんが、筆者はむしろ凄いことだと感じます。


人間は思っている以上に操られやすく、自分は騙されないと賢しらに語っている人も、占いであれ恋であれ商法であれ、100%心理を利用され動かされています。

それが犯罪に繋がれば悪ですが、眠る意志を呼び覚まし行動させる力が働くのなら、占い師はカウンセラーとはまた違った人を救う役割を担っていると言えるでしょう。

そして有用なものには市場の力が働きますから、1兆円の規模というのも納得の数値です。


「でもでも、つまりは占い師ってみんな嘘っぱちっていうことなの?」


そういった夢を持ちたい方へ、これについては次回、本当の占い師はいるかもしれないという記事でご紹介します。

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