遅ればせながら、ミナガワさんのカクヨムデビュー作、拝読しました。
なんというか、何十年も文章を書き続けてきた方が、ちょっとしたいたずら心で、気持ちの赴くままにエッセイと幻想譚の中間っぽい小品をものしてみた、というような作品ですね。出品先の最終選考だかで話題になっていたというのも、納得できる気がします。すでにして独特の香気が立ち込めていると申しますか。
ところで一応確認しておきたいのですが、本作の中では施術を受けていた男自身がミミズクになりたいと希望し、金を払ったということでしょうかね? あるいは、金を払ったのは酔狂な趣味の別人で、男は言ってみれば借金のかたにとか、やむにやまれぬ事情でとかで、こういう身の上になったんでしょうか?
前者であるなら、当然生命の危険は承知の上で、という契約を交わしたものと思いますが、オチからすると、そういう命知らずなミミズク志願者が何人もいる、ということになりそうですけれど、そこは作者ご自身としてはどのようにお考えだったのでしょうか?
「そこは触れないでほしかった」ということでしたら、すみません 笑。ファンタジーっぽくにつじつま合わせしていいのなら、これらは男のクローン的な存在で、意志を入れる前のホムンクルスであるとかいう形にすれば、一応「金持ちスポンサーの太っ腹な依頼案件」という形で収まりますが、猟奇すれすれなこの話の味わいは薄れますね。とはいえ、ここをこのままとするのは、ちょっともったいないという気もします。もっとも、幻想文学の範囲だと、こういう荒っぽい不連続面をわざと放置しているような例も見受けますが。
まあしかし、マスコットキャラにかこつけた短編募集にこんなのが送られてきたら、インパクトは極大ですね。私が審査員なら、その後何年も語り草にしそうです w
作者からの返信
ありがとうございます!
ご質問の件、ちょっと長い回答になりますがよいでしょうか?
まず、私は昔、あの宮崎駿様が千と千尋の神隠しについて、「あの世界の物事にもちゃんと歴史や理由があるけど、千尋がそれを求めないからわからない」という意味のコメントをされているのを読んで衝撃を受けたことがありまして。
私はそれまで、作品内の事柄について作者が取りうる立場というのは「設定がある=考えている」か「設定がない=考えていない」の2択だと思っていましたので、「設定があるんだろうけど私は知らない」という3つ目の立場があることに衝撃を受けたのです。(余談ですが、これを知って、エヴァンゲリオンとの対し方がはじめてわかった気がしました)
また、私は「物語はストーリーよりもシーンのほうが重要」と考える派です。つまり、ストーリーはシーンのためにあるべきだと考えております。
以上を踏まえてご質問に回答しますと、この作品を書いている時は、「男が自ら志願してミミズクになりに来たんだろうな〜」と考えていたと記憶しています。
しかし、書いている途中で最後のオチを思いつき、ああいう形にしたことで、「いろんな事情の人たちがいたんだろうな〜。この人はどうだったんだろう」と、私も思っております(笑)
私個人としては、ここはあまり重要なポイントではないというのもあってこのようなスタンスなのですが、ここを「もったいない」と思われたというのは、なるほどなあ、という思いです。
ちなみに、この作品を読んだ職場の後輩からは、「この女性がどういう経歴でこの職業についたのかにとても興味が湧く」という意見をもらいましたが、それについても、そこが気になる人もいるんだなあ、という思いでした。
やはり、湾多がご指摘のように、幻想文学ではおうおうにしてこの辺が切り捨てられているので、その方向性を目指した私本人は違和感なく放置した、というところでしょうか。
と、なにやら回答になっているのかいないのかわからなくなってまいりましたが……
評価&コメント、ありがとうございました!
衝撃です。
とんでもないことが行われているにも関わらず、ぐいぐいと惹きつけられて読ませてしまう力に圧倒されました。
個人的に痛い描写やグロい設定は苦手なんですが、耽美だからかするすると読めてしまいました。
素晴らしかったです!
ミナガワさん、ありがとうございました。
作者からの返信
早速読んでくださって、ありがとうございます!
お褒め頂き、とても嬉しいです^^
ただ、この時は耽美のつもりで書いたのですが、改めて読むと耽美とはいえないですね(笑)
そして、この作品の後も何度か耽美で書こうとしたのですが、結局うまく書けず、「耽美」の難しさを痛感することとなりました。
あれは本当に特殊な才能が必要だと思いました。
でも、未来屋様のお気に召したようで、良かったです。
こちらこそありがとうございました!
高尚な語りで残酷、知識が緩やかに裾野を広げる表現、ホラーに成りかねないギリギリの塩梅。その向こう側に透明感のある知性が伺え、楽しまさせて頂きました。ブッコローさん誕生前夜のエピソード。審査の方もさぞや驚いた事かと思います(笑)。ありがとうございました^_^
作者からの返信
デビュー作までお読みいただき、ありがとうございます!
久しぶりに書く小説ということで、かなりさぐりさぐりだったのですが、それが結果的に良かったのかもしれません。
お褒めいただき嬉しいです^^
こちらこそありがとうございました!