第28話 告白

 アレス王子はミスティアのそばに歩み寄り、ミスティアの髪を指に巻き付けて口づけした。

「アレス王子?」

 ミスティアは戸惑い、一歩下がった。


「ミスティア様、私はあなたともっと親しくなりたいと思っています」

「え」

 アレス王子は穏やかな笑みを浮かべ、優しく言った。

「ミスティア様がよろしければ、家族にも紹介したいと考えています」

「……!? そんな、恐れ多い……」


 震えるミスティアの手を取り、アレス王子は指先にキスをした。


「また、お会いしましょう」

「……アレス王子」

 ミスティアはそれ以上何も言わず、背を向けて去っていくアレス王子を見守った。


***

 アレス王子は王宮に帰り、父と母に言った。


「父上、母上、私には愛する人が出来ました」

「アレス、恋をしたというのか?」

 国王に尋ねられ、アレスはにこやかに頷いた。

「そうか。だが、お前の結婚相手はもう決まっている。……愛人を作るということか?」


 アレス王子は眉間にしわを寄せた。

「なんとおっしゃいましたか?」


「恋なんて、甘いことを言ってどうするのですか? アレス」

 女王の声にアレス王子は目を見開いた。

「王子の結婚相手は、私たちが決めます。あなたの気持ちなど、関係ありません」

「そうだ」

 アレス王子は両親の言葉を聞き、体から血が引くような軽いめまいを覚えた。

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人形城の棘姫(にんぎょうじょうのいばらひめ) 茜カナコ @akanekanako

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