第27話 中庭
「バラの花も、もう落ちてしまっている……冬が近いのね……」
ミスティアは風が冷たくなってきた外の空気に身震いし、上着の襟元を押さえた。
ミスティアは顔を上に向けた。
いくつかの雲が浮いていて、空は抜けるように青い。
「ミスティア」
ミスティアは首を振った。
「馬鹿ね……アレス王子の声が聞こえるわけなんて……」
「ミスティア、体調はもう大丈夫なのか?」
ミスティアはふり返り、目を見開いた。
「アレス王子!? ……どうしてここに?」
アレス王子は頬を赤く染め、ミスティアを見つめている。
「リリアから、ミスティアの体調が良くないと聞いて心配で、来てしまった」
ミスティアは両手を口元に当てて、動揺を隠そうとした。
「外は冷える。部屋に戻ったほうが良いのではないか?」
「……はい」
アレス王子はミスティアに腕を差し出した。ミスティアは遠慮がちにその腕に手を添えて、一緒に歩き出した。
「たしかミスティアの部屋は二階だったな」
「はい」
アレス王子にエスコートされて、ミスティアは自分の部屋に戻った。
「さあ、楽にしてくれ」
ミスティアはアレス王子に促されるままベッドに座った。
「……アレス王子、どうして……」
「君に会いたかった」
ミスティアの目から、涙が一筋流れた。
「ミスティア? そんなに具合が悪いのか?」
アレス王子が心配そうな表情でミスティアの目を覗き込んだ。
「いいえ」
ミスティアは心の中でつぶやいた。
(ああ、私は……やはりこの人を……愛してしまった)
「……なんでもありません」
ミスティアは悲しそうに微笑んだ。
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