第26話 朝食
「ああ、昨日は本当に素敵な舞踏会だったわ!」
リリアが夢見るような遠い目をして言った。
「そうかい。残念だったね、ミスティア」
「……ええ、そうですね、お父様」
私は口元に笑みを浮かべて頷いた。
朝食を食べながら、リリアは昨日の舞踏会を思い出し、私たちに語った。
「アレス王子のダンスには目が奪われました。とても軽やかに踊られるんですもの」
「そう」
「お姉さまとアレス王子が踊られたら、きっとまた会場の注目の的になれたのに」
リリアが唇を尖らせてため息をついた。
「……いつまでも……夢を見ているわけにはいきません」
私は目の前のスープを見つめたままつぶやくと、リリアが私に尋ねた。
「お姉さま、なんておっしゃったの?」
「いえ、何でもないわ」
食事を終え、部屋に戻る。
アレス王子から頂いた白いバラの花束は青い花瓶に生けられ、ベッドのわきの机の上に置かれている。
私はバラの花束から一輪抜き出した。
「きっと、アレス王子には深い意図は無いわ……ただの社交辞令……」
抜き出したバラを花瓶に返し、私はベッドに入った。
目を閉じると、アレス王子の美しい顔が浮かぶ。
「私はなんて愚かなの……」
不相応な思いを持て余し、深いため息をついた。目を開けると、バラの花束に目が行ってしまう。
「外に出てみようかしら」
私は自分の部屋を出て、中庭に向かって歩きだした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます