第24話 後悔

 ミスティアの熱はすぐに下がったが、ミスティアは落ち込んでいた。

「きっと、身分をわきまえずに演奏を聞かせたり、アレス王子と踊ったりした罰が当たったんだわ……」

 ミスティアは部屋の中で、新しく作り始めた人形に問いかけた。

「身分違いの思いを抱いてしまったら、どうやって諦めればいいのかしら……」

 人形が答えるはずもなく、ミスティアはあきらめたように笑った。


 ドアがノックされて、リリアの声がした。

「お姉さま、お加減はいかがですか?」

「熱はもう大丈夫……」

「そうですか? 明日の舞踏会には行けますよね?」

「……いいえ、家にいるわ。もう少しゆっくりしていたいから、舞踏会ヘはリリアだけで行ってくれるかしら?」

 ミスティアはリリアに聞こえないくらい小さな声で付け加えた。

「……また、身分違いの夢を見てしまっては困るもの」


 リリアの声がした。

「アレス王子がガッカリしますよ? でも、無理をしてまた体調が悪くなっても困りますわね……。わかりました。ブライアン公爵とアレス王子には、心配しないよう伝えます」

「ありがとう、リリア」

「お大事に、お姉さま」


 リリアの足音が小さくなっていく。

 ミスティアはため息をついて、手の中の作りかけの人形を見つめた。

「また、あなた達と過ごすだけの毎日に戻ればいいだけなのに……どうして胸がくるしくなるのかしら」

 人形を窓際の机の上に置いてから、ミスティアは外を眺めた。


「出会わなければ……こんな気持ちも知らずに済んだのに……」

 ふと、アレス王子の笑顔を思い出し、ミスティアは目をつむり首を振った。

「夢など、見ないほうが良いわ……」

 ミスティアはベッドに戻り寝転ぶと、天井を見つめてから、そっと目を閉じた。



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