第22話 夜の散歩

 ミスティアは「今日は疲れたので、早めに寝ます」と両親とリリアに言い、部屋に戻った。

 月が出ている。

「なんだか……落ち着かない……。散歩に行こうかしら……」

 ミスティアは動きやすい格好に着替え、ローブを羽織って外に出た。


 外の風は冷たい。ミスティアは深呼吸をして、月を眺めた。

「まるで、夢のような時間だった……。アレス王子もブライアン公爵も……優しかった」

 ミスティアは湖に向かって歩いて行った。

 湖に着くと、そのそばの切り株に腰かけ、水面に映る月を眺めた。


「アレス王子と……ワルツを踊るなんて……考えてもいませんでした」

 ミスティアは、アレス王子の体温や、息づかい、優しい声音を思い出し、体が熱くなるのを感じた。

「……アレス王子は……私のことを……どうおもっていらっしゃるのかしら……?」

 水面を風が揺らし、映っていた月がゆがんだ。


「私は……アレス王子を……これ以上求めるわけにはいきません。身分が違いすぎる……」

 つぶやくように発した自分の言葉に、ミスティアは目を見開いた。

「求める? ……私は……アレス王子と一緒に……居たい?」

 恐れ多いという代わりに、ミスティアは首を振った。

「……体が冷えてきました……部屋に戻りましょう……」


 ミスティアは湖を後にして、自分の部屋に帰っていった。

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