アンデッド・リリーズ - End of the Eternity -
サクラクロニクル
おわりのつぼみ - Beginning of the End -
死にたくないと思うときには、いつも手遅れ。
*
そのふたりは暗闇に包まれた文芸部室で見つめあった。
まるで枯れ木を思わせる風貌をした黒髪、
ヘテロクロミアを輝かせる亜麻色髪の少女、
凛音の手にセラミックでできたナイフが握られている。
治奈の手中にもぎらりと輝く合金の包丁が見えていた。
「どうしてわかったの」と永遠野凛音は濡れた瞳で言う。
「わかるよ」と治奈は答える。リンちゃんのことだから。
「殺すよ、ハルナ」
この退屈な日々の中、私は終わりに等しい大罪を犯す。
「うん。わたしも」
この世で最も愛しい
凛音から先にナイフをおなかに突き立てる。
そのやわらかさがおそろしく、彼女の刃はひどく浅い。
治奈の顔は苦痛で歪み、それでも必死にやり返す。
決意の
そうか、と凛音は気づく。
始めたのは自分なのだから、決着をつけるのも自分だ。
おねがい、と治奈は想う。
最後の一刺しまで、自分の身体がもってくれることを。
幾度も繰り返される、とても拙い殺し合いの果てに、ようやく治奈が膝をついた。その身体を凛音は抱きしめる。ここまでやったというのにまだ離れたくないというわがままに支配される自分自身がとてもきらいだ。
治奈は事切れる直前に、刃を横に寝かせて凛音の腹部を貫いた。これまでとは違い、とても深いところまでその金属は突き刺さった。治奈は凛音の顔を見る。真っ赤に染まった頬を涙が白く洗い流していくのを見る。
ああ、とふたりはお互いの表情を見ながら想う。
なんてこのひとは美しいんだろうと。
そして、なんて間違いをしたんだろうと。
後悔を胸に秘め、少女たちは抱き合ってその場に倒れる。
こんなことがしたかったわけじゃない。
じゃあ、本当にやりたかったことはなに?
はじまりのことを、凛音はもう覚えていない。
終わらせる方法を、治奈はまだ解っていない。
だから花は閉じたまま、咲くべきときを待っている。
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