第6話 夏休みが近い(7月7日)

 悲報‼

 学習塾の関連子会社は、学習塾だった件。


 まあ、自分の会社に興味無さ過ぎだよ、俺。

 確かに、塾の関連子会社が工場だったり商店のはずはない。

 そこまで多角経営出来る大手ではないのだから。


 俺が出向することになったのは別の塾で、考えてみればこの少子化の時代、非常に理にかなっている。

 俺が入社した学習塾はいわゆる進学塾で、オール3以下の生徒を受け入れない。

 実績を作る面でマイナスでしかない。

 

 しかし、世の中にはオール3以下の学生も多々いるのである。

 そこから授業料を取れないと言う縛りは、営利団体として痛過ぎる。


 ゆえに、子会社として別の塾を経営する。

 教師陣は……

 本校に付いていけなかった連中でいいや。

 こっちはそれこそオール1でも入れるから、実績にはカウントしない。

 確実に成績を上げるなんて言わない。

 ただ、勉強の機会を与えるのみだ。


 『あの〇〇塾の教師陣が‼』なんて、いらない子を追放しているにも関わらず、宣伝しているのも一助になっているらしい。

 それでも塾に入れたい親御さんが、相当数いるんだよね。


 自分の子供の成績が悪いことはわかっている。

 名のある塾には門前払いだ。

 かと言って、個人経営の塾は不安で……


 となると彼らは、俺のいる塾の門を叩くのである。


 ただこの塾、成績至上主義の元勤め先に比べ、俺の性にはあっていた。

 親への義理や、仕方なくで通塾している彼らだが、よく笑うし元気だ。

 変に媚を売る者も、卑屈な奴もいない。


 いや……

 お調子者はいるけどね。

 いわゆるヤンキー系。

 前の塾の、成績に裏打ちされた調子付きに比べればかわいいもんだわ。


 ただ授業は苦労した。

 担当教科が一気に増えたよ。


 この下位互換塾、市内に5校ある。

 で、教師陣は11名。

 基本2名ずつのコンビで1校を担当、残る1人は事務員兼不測の事態の交代要員だ。なんか彼、本校の方で追い詰められ過ぎて人間不信になったらしい。

 2人で1校、3学年分の5教科をみるのだから、担当教科なんて言っていられない。


 俺が社会と数学と理科。

 一応中学までなら理系も行けてよかった。


 相方の先生が国語と英語。

 後、彼女4年目なので、一応××校の責任者を兼務する。

 「私、岡野早苗(オカノサナエ)ね。よろしく、金原君」と手を差し出した、サバサバ系の先輩女子だ。

 ショートカットのかわいい系。


 で、初めは以前やっていたそのままの授業をした。

 まあ、普通に学校の授業風。

 でもね、ここの塾生、聞いちゃくれない。

 歪んでいるがやる気はある、元塾の生徒とは全く違う。


 特に社会なんて半数寝た。

 一体ここでどういった授業を成立させているか、興味があった俺は、岡野の授業をチラ見した。


 彼女は少し……

 いや、少しどころじゃない、変わったやり方で授業を成立させていた。

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