エヴァーラスティングマン20―史上最多の戦い!!
gaction9969
〇===○○○
ついにこの時がやって来た。今こそ、諸悪の根源と、決着をつける。辺りを包むのは暗闇。巨大な釜の底のような。いや、鍋の底か?
「……ッ!!」
咄嗟に一歩引く、そして後方へひとつ
動け。
避け際、様子見でパラパラと撃ってみたこちらの「弾」は案の定、相手には利いている気配すら無い。そうかよ、そうだろうよ。そうでなくちゃあ拍子も抜けるってもんだ。
萎えることなどこの場においてあるわけが無いが、それでも心の炎の嵩と温度を下げられそうになる。多勢に無勢。圧倒的な彼我の戦力差。次々と吐き出される軍勢を前に、こちらはたったのオレだけ。
いや、違う。
今までに散っていった
オレの脳裏をよぎるのは、長いようで短かった、戦いの日々。その中で確かに得た、得てきたものがあるはずだ……ッ!!
――いやまあ、歌えるっちゃあ歌えるんですよ? 正味の話。た・だ!! そんなね、「あ、これから歌うんだろうな」的な、何て言うんですかね、流れの中でね、ふぁー来て、すっと歌ったところでですね、そこに何があるかな? いうところなんですよ、そこに何と言うか、葛藤? いや違うな、「葛藤」なんてカッコいいこと言っちゃったw 違う違う、そんなね、深い考えとかあるわけじゃないんですけど、うん、「うたう」言ってもね、「謡う」も「謳う」も「詠う」もあるわけなんでね、そこはちょっと考慮すべきところっていうか……あ、じゃあ何、何が出来るのそして何から行くの、みたいな期待を持たされたところで、それはね、それは逆に選択肢狭まっちゃうっていうかね……あ、ああはい、じゃあそろそろ行きますか。えー、歌いますよ歌います、はい、では歌います、「4分33秒」……
うたうと見せかけてうたわざることモアイ像が如しマン……!!
――何とびっくり!! 水を注いで三分待つだけで奥さん、熱々の鍋焼きうどんがお手軽に出来てしまうという、今までそんなの見たこと無い!! いや正にこれがテクノロジぃーの進歩って奴ですかねぇ、何て言ってるうちにほら!! 火にかけたわけでもないこのアルミ鍋からね、うわーっと凄い湯気が立ち昇って来ましたよ!! しゅーしゅわーっと、もうこれは蒸気、紛うこと無き蒸気機関ですよこれは、ねえ、これを見たお子さんたちもしゅっしゅしゅっしゅ上機嫌、なんてね。あらら、中途半端な笑いはかえっていたたまれませんよ、って、ほぅら、蓋を剥がせばもうぐつぐつだぁ、見てくださいなこのとろとろぐずぐず具合!! しいたけ、あぶらげ、ねぎ、かまぼこ!! どれもいい具合におだしが染み込んでいてね、これがまた冷え切った身体にも沁み渡るんですわ……さてさて澄み切った出汁にふるふると踊り泳ぐ、ふにゃつるりとしたうどんの食感を味わったらですね、もちろん玉子も丁度いい感じの半熟かげんになるようになってますからね、崩して味変、極上のダブル体験をお宅の食卓にも是非!! 10個パック通常3,000円のところを今回は何と特別価格ッ!! 1,980円でお届けいたしちゃいます!! さあさあ今すぐお電話、お待ちしておりますよッ!! ……
未確認飛行物体仮面:鍋焼きうどんマン……!!
――A「ええ、『万年筆からダージリン』」B「……ええッ!? え、これ万年筆から? あのこう……スラスラっと書く奴から……え何でッ!? あ、そう……そうなんだぁ、こう何書こうかなとか悩んでいる時なんかにね、ああ先からピュッと……ダージリン。落ち着いて……落ち着いてこう癒しをと。万年筆。万年筆から、ええダージリ」A「『屯田兵からの
万年筆から何故か滴り落ちるは極上の
――や、姐さん、でもね? 言うてこうそれ……セレモニー的なやつ言いますかね、ま、ま、あるっちゃありますよ? 何かね、映画とかでは見たことはありますけど、ま、あれも水とかやったんちゃうかなぁ……お寺さんの、あの手ェ洗うとことかの、うん、そうそう。で、で!! 今はね、今のこの場はね、こうあるわけじゃないですか、こう、いい感じに煽れるこの枡がね、ね、それに汲むための奴であって、そっから直にっていう、うぅんまあいいのかなぁ……あ、いや全然、そんな意見とかや無いです。自分もじゃあこう持っちゃいますね、こう構えちゃったりなんかして、よーし飲むぞー、今日は祝いの席やし飲んだるーって、姐さん? ああああダメですよダメダメ、そんな顔からいったら……
ええ?樽から
――いやいやいや、感動!! 感動の余韻みたいなもんやないの、「蛇足」ッ!? そんなん言うたらあかーん、何やのこの子ッ!! 素の顔見せられても困る、てそらそうやけど、でもそういうもんやから。それよりあんたそんな事に能力使たら、そっちの方があかんて、お客さんみんな、あれ故障? みたいなって舞台上も客席全土もみーんなざわざわざわざわするで、ぜった変な空気んなる!! せやからもう大人しゅうしときって、帰りにパフェー食べさせたるさかいに……
あかんて!念力なんかで感動のカーテンコール妨げたらーマン……!!
――やはり十七文字にぴたり嵌まった時の完全感といいますかな、例えるなら大自然の只中にひとり坐していると次第に彼我の境界を溶かすかのように滲んで来る身体の内外を巡る流れ、うむ、それはまったく全能感と言い切ってしまっても良いかも知れません。どうともならない自然というものを、人間が作り出した言葉の短いつらなりで切り取る、封じ込める、ねじ伏せる、まであるかもですな。ゆえに俳句というものは無限であると、そう言えるのではと、不肖わたくしなんかは思ったりするのです……
赤信号/梅雨空わたるは/慌て河童かな(字余り)マン……!!
――時に人は何処まで深淵に至れるのだろう……そんなことを考えながらいつも制作に勤しんだりしていますね。深く深く、潜るかのように。それぞれの事象の持つ、細かい皺のようなものの中まで入り込むかのようにですね。ええ。そういった物語の細部にまで、実は宿ると思うんですよ、何と言うか、魂の、「魂の」とまで言い切ってしまうと大仰かも知れませんが、そのようなものが。はい、逆に細部にこそそういったものが脈々と、ぱっと見は分からないんですけれど潜み流れているというか、ですか。そう……例えば今回の作品の前半の炭鉱町、その朝まぐれのレンガ屋根の上にね、ぽつりいるところの、遠くに臨む山裾から差し込む朝日を浴びながら顔を洗ったりなんかしている黒猫にもね、やはり望む望まないに関わらず魂というものはあるわけです。それは主観客観問わず、そこに「存在する」という風にね、僕なんかはそう思ったりするわけです。そしてそれに付けられた名前というものも、付随して存在するだろうと。ええ。「名前」。ここでいうのは皆さんが名乗るものですとか、共通認識としての符号的な名前というのとはちょっと違って、「魂の依り代」と言ったらいいんでしょうかね、そういう意味での。ええ、そうです、え、何て名前か? ああ、いやちゃんとありますよ? もちろん、細部に宿っているわけですから。ええ。え? ああーその黒猫の名前は何ていうか? はは、こだわりますね、ええ名前、は、です……ですね、タン……ゴ、タンゴ、そう彼の名はタンゴ。タンゴで……あ、すいません間違えました、「黒猫」と来て「タンゴ」は流石に何と言うか、生まれ育った年代がわかってしまうというか、いえちょっと勘違いしただけですよ? そんなあからさまに引いた感じを出さなくとも。はは、ええそう……ええ、ヤマト、あ、いやちょっと言ってみただけで、ええ、ノリを考えて、みたいな……
深海監督と彼の黒猫の名は。マン……!!
――ピアスが♪ズレてる♪ニンジャマン♪ ピアスが♪ズレてる♪ニンジャマンッ♪
ピアスがズレてるニンジャマン……!!
全員の顔を思い出しながら、その能力を発動させ、奴の懐へと肉迫していく。もう少し、もう少しだ。だが。
ぐっ……流石に手ごわい……ッ!! 押し戻される。自分の思考に? そうだ……こんな……
こんな強引な
自由が創作の信条よ……ましてやこの
であれば。であれば貫ける……貫けるはずだぞ……ッ!!
そうだろ……? みんな。そうだ、お前らに言ってるんだぜ、今、
……オレに少しだけ、投稿する勇気を分けてくれ……ッ!!
――暗闇の、鍋の底のような空間に、ひとすじの光の直線が刺し貫いていく。見えたぞ道がッ!!
オレは、ようやくこの道を歩み始めたばかりなのだから……ッ!!
この創作という名の、永遠に続くように思えるほどの果てしなく遠い道をよ……!!
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