018. パーティを結成しました

 えーと、これは。


 幻獣もメンバー換算なんだとか、お前とパーティ組めたのかとか、色々思うところはあるのだけど。あるのだけど。


 なんっで私の名前の後ろ側にリモさんの名前があるんですかね?


「ペット、扱い……」


 思わず呟けば、不服だとばかりにリモが頭の上で跳ねた。振動がダイレクトに首に来ます!


「これ、どういう意味なんです?」

「ごめんわかんない」


 シェフレラがこちらへと聞いてくるも、流石に答えを返すことができなくて首をふる。


「パーティリーダー、一回渡してもらってもいいか?」

「はい、どうしたら?あっ、出ました渡しますね」


 こういうとき思考操作が有効になってるの便利だよな。考えたことで出来ることは大抵なにかしら反応がある。

 渡ってきたリーダー権限を承諾して、パーティメンバー一覧のウィンドウを目の前に移動させる。うーん、やっぱりエドベルの表記とリモの表記が違いすぎる。

 ぽんっとリモの表記を弾くようにすれば、ポップアップがもう一つ浮かび上がった。


 <パートナー枠:リモ 行動指示:自由>


 ……おや?


 出てきたウィンドウを確認してエドベルもタッチしてみるが、こちらは特に何も反応しなかった。

 なるほど?


「これ、パートナー契約してるからだな。多分……パーティメンバー上限にひっかからないんじゃないか」

「上限?あるんですか?」

「あった気がする。ちょっと待ってヘルプ……うん、あるね。通常6人が上限みたいだ」

「確認、は、できませんね……」

「人数足らないしね。まあその内できるだろ」


 頬に人差し指を当てて首を傾けたシェフレラから、気になるオーラが出ているが、人数はもう仕方ない。それよりも、もっと確認したいことができた。


「なあ、シェフレラ。エドベルとパートナー契約って出来るのか?」

「え?」


 そう。パートナー契約。

 パートナー枠と出ているのだから、エドベルとシェフレラがパートナー契約を結べたら、同じ表記になるのではと思ったのだ。

 パートナー契約自体、まだ未知数。どういうもので、なにをしたら契約になるのかわからない。けれど、エドベルとシェフレラの仲は良さそうだし、コミュニケーションも十分取れる。その状態で契約をするという意思が双方にあれば、出来るんじゃないのかな、と。

 ――別に、同じような立場を増やして負荷分散しようとしてるとかではないからね!?


「なんだなんだ?ぱーとなーけいやく?」

「えっと」


 耳がピンっとこちらを向いたエドベルと、困ったようなシェフレラ。

 嫌だ、っていうのではなく、どうやったら出来るかわからない、って感じだな。でもごめん私もよくわからない。


「私と、リモみたいな関係のことかな」


 まあこいつ何に役立つのかいまだわからんけど。たぶん戦闘?なのかな?幻獣というわりには、魔法的なうんちゃらかんちゃらをやっているようには見えない。説明書きにも物理、って書いてあるしね。


「リュッ」


 こちらの思考を読んだのか、不服そうにリモが鳴く。

 あー、そうだねー、利き果実とかはできるかもねー(棒)

 ……いやまて、採取前に目星つけられるならそれはそれで有用では?


「んー、よくわかんないけど、レラの役に立つことか?」

「たぶん……?」

「なんでレラが不安そうなんだよ!いいよ、やるよ、けいやく?ってやつ!」


 おお、男前だね!

 思わず拍手したとき、シェフレラの肩がぴくりと揺れた。おそらく、私とリモが契約したときのようなウィンドウが出てるのかな?少しの沈黙と、目線の動きと、安心したように息を吐き出す仕草からそれが見て取れた。


 ポーン、と、耳慣れない音が耳に響く。


「うぉ」


 ちょっと予想外でびっくりしたけど、どうやら私がパーティリーダーだったせいみたい。パーティウィンドウを見れば、エドベルがパートナー枠に移動しましたという説明が浮かんでいる。予想は当たったようだ。


 となると……もう1個の予想も当たってるといいが。


「おめでとう。無事契約できたみたいだね」

「は、はい!ありがとうございます?」


 変わらないシェフレラと違って、エドベルは俯いている。その肩が震えているのに気づいたシェフレラが声をかけようとして、顔を上げたエドベルにぶつかりそうになった。


「す、すっげ!すっげえよレラ!おれ、今スキルもらった!!」

「え!?」

「【威嚇】と【爪蹴】!まだ成人まで時間あるのに!すっげえ!やったあ!!」


 思わずリモを見ようとする。頭の上だから見えない。

 契約したとき、お前、なんかもらってるの?どうなの?いやあれってそもそもお前から一方的に結ばれた気もするんだけど。じゃあ私にスキルくれても良くない?


「ホップ!ありがとうな!これでもっとレラの役にたてる!」

「おお、ああ、いや、よかったな」


 キラキラした顔で見てこられて、悪い気はしない。疑問点はたくさんあるけど、悪いことじゃないならまあいっか。


「あの……ホップさん、影響度の上昇って……なんですか?」


 エドベルの後ろから、控えめにシェフレラが聞いてくる。さっきわからんって言ったから気おくれてしてるのかな?まあ今回は答えられる。安心してくれ。


「私もリモと契約したときに出たんだ。いま解ってるのは、箱庭から出るときに出口を三国から選べるってやつかな」

「え、じゃあインエクスセスにも行けるのか!?」


 食い気味にエドベルが聞いてきた。なんか用事でもあるのかな。


「行けると思うぞ。私もここ、クルトゥテラ所属なんだけど、ほか二国に行けるようになったから」

「おおおー!じゃあオランジ手に入れられるってことか!!」

「そういえば、パーティチャットの確認のときにそんな話してたね」

「おう!オランジがあれば最高級の果実酢が作れるんだ!」

「それ詳しく」


 いけない、こちらも食い気味に聞いてしまった。

 だってお酢まで発酵させなければ!お酒に!なるかもしれないじゃないか!!


「おれも詳しくはよくわかんない!!おばさん……俺たちの保護者が言ってたんだ!ライムでも作れるけど、オランジがあればもっと良いものが出来るのに、って」

「作り方教えてもらえたりは」


 その言葉に、ちょっと困ったようにエドベルの尻尾が垂れる。眉も耳も八の字だ。


「いっしそーでん、って奴だから……おれ、後継ぎじゃないし。たぶん、難しいとおもう……」


 そっかあ!難しいかあ!!

 本気で困ったようなエドベルに気にするなと伝えて、パーティリーダーをシェフレラに返還する。

 気になったことは確認できたしね。


「じゃあ、シェフレラも三国移動できるか確認しよっか」


 箱庭の出入り口を開きつつ、しょんぼりしてしまったエドベルの頭を乱暴に撫でた。

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