240705

【2024年7月5日】



「緩すぎですっ!」


 選挙管理委員会監査局副局長を務める2年6組の天空明てんくうめいさんは突然生徒会室へやって来るとうちらの様子を見るなりそう言い放ちました。


「え〜? メイメイちゃん」


「明です」


「あはは〜 明ちゃん、わたしたちはずっとこんな感じだったよ?」


「それが問題なのです!」


 1年生の頃から明さんとはクラスが離れていたのでどのような子なのかはわかりませんでしたが、怒っているちーちゃんにそっくりだと思いました。おっかないという意味でも、怒りながらも可愛らしいという意味でも。


「例えば、央戸おうどさん……貴方は初対面の女子生徒でも距離感が近いと報告を受けています」


「あぁ、まあ確かに……でも、アニキに指摘されてからは極力しないようにしているつもり……だけど」


 でしないようにしているつもりなんだと思ってしまいましたが、今そのようなことを言ってしまうのはうちら的に良くない気がしたので何も言いませんでした。


「次に、左久良さくらさん……貴女はお付き合いされている方々との交友が時折目に余る所が見受けられます。表現は人それぞれですから深くは口出しするようなことはしませんが、生徒会役員としてもう少し節度を持ってください」


「はい……」


 そう言われて、ジュンジュンはまだしもちーちゃんとはこの間みたいに膝の上に座ったり、おねむなちーちゃんに膝枕をしてあげたり、思い当たる節はいっぱいあったと再認識しました。


「次に……というか、今は生徒会活動中なのですよね? 花野かの先輩は何故出席されていないのですか!」


あたしはいつも会計室からリモート参加なので』


「……今の時代リモート参加に文句をつけるつもりは無いですが、問題と思われるのはです! なんですか会計室って」


『監査局なら知っての通りかとは思うけど、明才は生徒会が多額のお金を管理している。それらのデータを管理しているパソコンを貴女のようにアポイントも無く出入りできる生徒会室に置いておくというのはセキュリティ的に大いに問題がある。だから会計専用の部屋を作ることで情報の流出を最低限に抑えているそこに何か問題が?』


「うっ……しかしですね、匿名で花野先輩が生徒会活動時間中にオンラインゲームにログインしていると告発が!」


『……』


「図星ですか」


『ごめんなさい、接続の問題でフリーズしていたみたい』


「そうでしたか。それではもう一度。匿名で……」


『あぁ、時間差で音声聞こえたわ。その件なら答えは簡単。ゲーム内イベントをこなす時間が割けなかったから友人に操作してもらっていただけの事』


「……それは失礼しました。こちらの調査不足でした」


 うちだけでなくピカルん会長たちもフリーズしたという所も含めだという確信がありましたが黙っていました。


「気を取り直して、速水瀬はやみせ先輩!」


「気を取り直さなくて良いんだけどなぁ」


「先輩は制服を着崩し過ぎです」


「でも可愛いよ? 女の子は可愛く見てもらいたいものでしょ? ねぇ〜?」


 ネオちゃん先輩の発言にうちは大きく頷きました。流石にネオちゃん先輩ほど着崩す勇気はありませんが。


「言い分は分かりますが、ほどほどにして下さい。男子生徒だけではなく外部の人の目もありますので」


「は〜い。ほどほどにしま〜す」


 うちらは多分1週間くらいだろうなと思いました。


「最後に……」


 凛くん、うち、春奈先輩、ネオちゃん先輩と指摘を受けたのでうちらはピカルん会長に視線を向けました。


「よそ見しないで聞いてください! 最後問題なのはこの生徒会室です!」


「「「『えっ!?』」」」


「あれ、俺じゃないんだ」


「? 監査には会長関連は何も報告来ていませんが、思い当たる節が?」


「いや、無いですけど。4人の問題点の次は俺なのだろうと勝手に思い込んでいただけで……。続けてください」


「少し調子が狂いましたが、この生徒会室はなんなんですか! お茶にお菓子に……うらゴホン! けしからんです!」


 全員が「今、羨ましいって言いかけたなぁ」と思いましたが、明さんの名誉のために黙って聞いていました。


「まあ、それは歴代の生徒会から引き継がれてきたものだから目を瞑って貰えると」


「と、とりあえず! 生徒会室は置いておくとして各個人の問題点に関してはこれ以上緩みすぎてしまわないようにしてください! 以上です」


 そう言った明さんは帰り際に小さくお腹の音を鳴らして生徒会室を出て行きました。

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