240629

【2024年6月29日】



「それは災難だったな」


 昨日の明才高校クーラー故障事件を海さんに話すと他人事ひとごとではありながらとても真面目な表情でそう告げた。


「災難なんてレベルではなかったですよ。あの暑さで誰も搬送されなかったのが奇跡なレベルですから」


「それは良かった。話を聞く限り結構な危機的状況だったようだから千景さんが動くことに……いや、もう動いてそうだな」


「ちー姉さんがですか? どうしてです?」


 ちー姉さんは明才高校のOGであり、生徒会長を務めていた際の伝説は未だに語り継がれているが、今回の案件とは無関係のはずだった。


「会長当時にこうなることを予測出来たとはいえ、対応策をマニュアル化出来ていなかったことを1人で勝手に悔やむ人だから。まあ、まさかここまで大きな障害が発生するなんて想定の範囲外だっただろうけれど」


「流石、ちー姉さんの右腕ですね」


「いやいや、俺なんて右手の指くらいなもんだよ」


 そんな謙遜をする海さんのスマートフォンは突如として震えた。


「噂をすれば……。俺も元生徒会長としての責務を果たしますかね……」


「お疲れ様です。片付けは俺とそらましでやっておくので、行ってください。多分七海ナナさんも呼ばれますよね?」


「千景さんのことよく分かってきたな。親指くらいにはなれるんじゃないか?」


「せめて足の小指くらいですよ」


 すぐさま出かける準備をして朝日亭を出て行った海さんに俺はそう告げた。

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