240614

【2024年6月14日】



「許せないっ!」


 山田が叫んだ。


「気持ちは良くわかるよ。わかるけど……そこまでじゃない?」


 激昂する山田に対し、幼稚園の頃から山田と一緒らしい三戸みとは優しく寄り添っていた。


「山田のやつ急にどうした?」


「模擬店で使うメニューが気に入らないらしいわ。風音かざねの両親広島出身らしいのだけれど恐らくそれが激昂する理由を紐解くヒントになるのではないかしら」


「……ああ、『広島お好み焼き』の表記が気に障った感じか」


「メニュー表の担当は誰だったかしら?」


「確か、中宮なかみやだな」


 当の本人は知らぬ存ぜぬという雰囲気でスマートフォンをいじっていた。


「風音、そのメニュー表を作った犯人ならそこに居るわよ」


「千花……言ってやるなよ」


「……中宮ぁ! お前かぁ!」


「えっ!? はっ!? なんすか? うっわ! 山田……!」


 山田が中宮を追いかける姿はまるでネズミを追いかけるネコ、大泥棒を追いかける刑事のようで、俺たちにとってはいつもの光景だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る