240613

【2024年6月13日】



「凄いな、おい……」


 明才祭のステージを下見に来るという千花さんちー姉さんを出迎えに行くと、校門前はこれまでに見たことがないほどの人が溢れていた。


 出店の準備等で混雑しているような雰囲気も感じられなくはなかったが、大半が有名人か誰かを一目見ようとしている者たちだった。


「……まあ、そうだろうとは思いましたよ」


「アポイント無しの訪問で騒がせてしまって申し訳ないね。千景が行くというものだからついて来てしまったよ」


「まるで私たちがこの人混みを形成したかのような言い草ね」


 全くの冤罪という事は無いのだろうけれど、ちー姉さんと一緒に来ていた為奈さんと風和さんがここまでの人を集めていたわけではなかった。


「アポイント無しだとして、OGオールドガールの為奈さんと風和さんは問題ないと思いますけど、あなたは部外者ですよね?」


「しっつれいしちゃうな〜 さいちゃん(の妹)もれっきとしたこの学校の卒業生だよ!」


 言葉にはしていないというのにここまでハッキリと( )かっこの中身が聞こえたのは初めての経験だった。


「全く……来てしまったものは仕方がないので、この人混みをどうにかしてください。出来ますよね? で」


「ジュンじゅんはさいちゃん使いが荒いなぁ。さいちゃんのはそう易々やすやすと使って良いものじゃ……みんな解散〜」


 俺の知る限り普段から易々とチカラとやらを使っている人が何を言っているのだろうと思いながら見ていると、雪崩のように押し寄せていた人混みは一時的に全てピタリと動かなくなったかと思うと興味を失ったかのように1人残らずこの場から立ち去って行った。


「あなたのがあればこの世界から戦争は無くなりそうね」


「せん、そう? さいちゃんそんな言葉知らないな〜」


 ほんの一時的なものなのかもしれないが、このから戦争という概念が消失した気がした。

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