240510

【2024年5月10日】



「楯サン!」


「アニキ!」


「「おはようございます!」」


 生徒会の活動としていつものように校門の前に立って登校して来る生徒に挨拶をしていた凛と何故か生徒会と共に並んで、誰よりも元気に挨拶をしていたそらましは俺の姿を見つけるなり、最敬礼で耳に響くような挨拶をして来た。


「おはよう。まず、そらましはどうして生徒会と挨拶運動に勤しんでいるんだ?」


「生徒会のお手伝いをしていたというよりは、朝から校門前ここで待っていれば楯サンに会えると思っていたら成り行きで……」


「ジュンジュン来るまでただ待っているのってつまらないかと思って」


 そらましを生徒会の挨拶運動に参加させたのであろう藍は『えへへ』と可愛らしく笑いながらそう言った。


「で、わざわざ朝から校門前こんなところで待つなんて、俺に何か用事だったのか?」


「あの、大したものでは無いですが結局昨日はバイトに行けなかったのでそのお詫びです!」


 わざわざそのようなことをしてくれなくても良いのに、そらましは丁寧過ぎるくらいに包装をされた小包こづつみを渡してくれた。


「あの程度のことで気をつかう必要なんて無いからな」


「そう言われるとは思っていましたけど……お納め下さい」


「わかった、わかった。十分過ぎるけれど、そらましの気持ちとしてありがたく受け取らせてもらうよ」


「ちなみに、中身はおにぎりです!」


「何処かのお店のやつとか?」


「ワタシが作りました!」


 素人目で見てもかなり高級そうな包みなのでてっきり何処かの店で買って来てくれたものだと思っていたけれど、その発言には別の意味で驚かされた。


「昼休みにいただくとするよ。で、次はお前さんだよ……凛」


「アニキ、千花のアネゴもおはようございます!」


「呼び方は好きにしても構わないが、あまり大きな声で呼ぶな」


「私としてもあなたの姉のつもりは無いのだからアネゴ呼ばわりは今後一切やめてもらいたいのだけれど」


「はい……気をつけます」


 俺からも一言くらい言ってやろうと思ったけれど、千花の一言でだいぶ気持ちが落ち込んでしまったらしい凛にかけてあげられる言葉を俺は紡ぎ出すことが出来なかった。

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