240509

【2024年5月9日】



「ジュンジュン〜 そらましが呼んでるよ〜」


 教室の扉からひょっこりと顔だけを出した藍は声高らかに俺を呼んだ。


「はいよ」


 優等生(あくまでも俺個人の見解である)のそらましが拘束力は無いとはいえ、学校のルールとして存在している『他学年の教室に行き来しない』という約束事を破ってまで俺たちの教室にやって来るというのは余程の用事なのだろうと思い、俺はすぐに教室の外へと向かった。


「どうした?」


「実は、放課後にクラスの用事で学校に残らなくてはならなくなってしまって。バイトまでに間に合わないかもしれないです」


「それでわざわざ俺に伝えに来てくれたのか」


「急ですみません」


「メッセージ送ってくれるだけで良いのにそらましは律儀だな。今日は平日だし朝日亭みせの方はなんとかなると思うから、用事が済んだ頃に一度連絡してくれ」


 こういう時に限って混雑してしまうのだが、その辺は気合いさえあればどうにでもなるので、そらましには不安な顔を見せずにそう告げて安心して教室へ戻ってもらった。

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