240425

【2024年4月25日】



「あのさあ、何をしているんだ?」


「この度は誠にさあせんっしたっ!」


 謝罪の言葉としては誠意を感じる事は出来なかったが、プライドがかなり高い事で知られている央戸凛がお手本のような土下座を行っているという今の光景はこれ以上無い誠意のように感じられた。


「頭を上げろ。事情を知らない奴が見たら俺が悪いみたいに捉えられかねないだろう」


「本当にさあせんっ!」


 2年1組と2組の合同体育授業前の男子更衣室で下着姿の生徒会役員が1生徒に土下座をしているなんて状況だけを悪意ある人間に切り取られてしまったら、凛に対して何かをしてしまった訳では無いのに俺が悪人のようにされかねなかった。


「同じ生徒会役員同士、楯くんとそれなりに仲が良いもの同士とはいえ、あ〜ちゃんには本気マジで不快な思いを……もちろんちっはなちゃんや楯くんにも同様になんすけど。オレの安い土下座なんかで許して貰えるなんて思っては無いっすが、ちゃんと謝らせてください」


「もう良いよ。十分過ぎるほど謝っているだろう?」


「いや、全然っす」


 朝から藍と千花にも同様(今は体育授業前の着替えのため下着姿というみっともない状態だが、2人への謝罪時にはしっかり制服を着ていた)に謝罪をしていたのを俺は知っているのでもう十分過ぎるほど凛の誠意は受け取ったつもりでいた。


「俺としては藍がしっかりと事情を説明した上で怒った時点で俺が出張って怒る必要が無くなった訳だから、さっさと頭上げてくれ。凛の土下座を安いものにはしたく無い」


「良いんすか?」


「それより早く着替えたらどうだ? 春とはいえまだ寒いだろうに」


「うっす! これからは心を入れ替え精進しますんで宜しくおなしゃっす! 


「お前、今なんて言った?」


 更衣室の扉に手をかけた俺は凛の言葉で手を止めて振り返ると、凛は真っ白な歯をこちらに向けながらまるで男性アイドルのような綺麗な笑顔を咲かせていた。

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