240416

【2024年4月16日】



「先輩方!」


 音楽スタジオCrowクロウからの帰り道、こちらからは個人を特定出来ない程の距離からそう声を上げ走り寄って来たのは一学年下の後輩でヒーローガールこと大空真白おおそらましろだった。


「そらましじゃないか。ランニングか?」


「はい、日課なんです。先輩方は……部活ですか?」


 そらましは千花の背負っているギターケースをマジマジと見つめ、興味あり気にそう問いかけて来た。


「私たち3人とも部活動には所属していないわ。あくまで、趣味でバンドを組んでいるだけ」


「だな」


 俺よりも、藍よりも早く千花がそう答えてくれたことが俺は少しだけ嬉しかった。


「趣味……ワタシのランニングと同じですね。仲間で一緒に出来るなんて羨ましいです」


「ランニングだって……」


 そう言いかけ、俺はふとそらましの足の速さを思い出した。


「へへへ、ワタシ手を抜くのが苦手で……一緒にランニングを始めた仲間は居たんですけど、いつの間にか1人になっちゃって」


 それはそらましにとって当たり前のことなのか、話している内容はとても悲しい事なのにとてもそんな事は感じさせないくらいにヘラヘラと笑いながら話していた。


「仲間ならすぐに見つかると思うぞ。明才に居れば」


「そうそう! 明才には色々な人が居るから」


「多くが変な人だけれど……私たち含め」


「せ、先輩方は変じゃないですよ! 絶対!」


 そらましは慌てたようにそう言うと、出会って間もないながらも必死に俺たちが変人ではない理由を説明してくれた。

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