230408

【2023年4月8日】



 いつもの様に俺の部屋で何をする訳でもなくただ、我がままにだらだらと時間を浪費していた俺たちだったが、今日は珍しく全員が同じ行動をとっていた。


三景みかげくんが私たちの関係に対して肯定的だったから良かったけれど、こんなにこと細かに話して、一歩間違えれば折角できた友人を失っていた所よ」


 千花ちはなは俺がこの一週間休まず書いた日記を読むと、かげっちにうっかり余計なことまで伝えてしまった俺に対して呆れながらもしっかりと怒ってくれた。


 俺のベッドに横になりながら言っている所為で威厳は一切感じられなかったが。


「ねえぇ~ ちーちゃんの日記に書いてあるこれマ?」


「マって何?」


「マジ……本気、この場合は本当って言いたいんだろう?」


 どうやら高校デビューをしてギャルになりたいらしい、中途半端な茶髪人見知り女子高生ことあいは俺の補足に対して大きく頷いた。


「で、何がマ? なんだ?」


「これ! これ見てよ」


 藍が俺に見せてきたのは俺がこの後見る予定だった千花の日記の最後のページ……つまり昨日の文章だった。


「夕方から姿が見えないと思っていたけどバイトの面接に行っていたのか」


「言っていなかった?」


「初耳」


「うちも今はじめて知った」


「まぁ、そういう事だから」


 だというのならなのだろう。俺も藍もそれ以上は問い詰めることはしなかった。これはルールとかではなく昔からの癖だ。


「バイトか……藍はどうする?」


「う、うちは。勉強についていけなくなったら困るから……」


「まぁ、そういう考えもあるよな」


 俺はどうするか。ふたりが帰った後も千花の香りが残ったベッドの上で考えて、考えて、考えて。結局答えは出ないまま今日は寝る決意を固めた。


 そういうこともある。そういうことも。

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