230407-1

【2023年4月7日】



「じゅんじゅん、隣良いかな?」


「おう、良いぞ」


 入学2日目の放課後、が部活動を見学したいというあいと何故だかそれに付き合うことになってしまった千花ちはなを学生食堂の片隅で待っていると何やら疲れ果てた様子のかげっちこと先本三景さきもとみかげがやって来た。


「かげっち、随分とお疲れみたいだな」


「ちー姉さんを知っている先輩方に拘束されちゃって……」


「それは、かげっちの本望じゃないのか?」


「ちー姉さんのことをもっと多くの人に知ってもらいたいと思っている僕にとってこれ以上望まないほどの本望ではあるけど、想像以上でキャパシティーが限界」


 そう言うとかげっちは食堂のテーブルに突っ伏してしまった。


「そ~いえば、じゅんじゅんはここで何してんの? 昼ごはんにしては遅すぎるし、夜ごはんにしては早すぎると思うけど?」


待ち」


「ほ~……。 どっち?」


「どっち……とは?」


「左久良さんと右茶美さん。じゅんじゅんってどっちとも同じ位距離感近いからどっちが彼女なのかなぁ~って。もしかして別の人? 先輩とか?」


「かげっちの推測通りで合っているよ。ただ、俺の彼女はどっちかじゃない」


 冷静に今の言葉を振り返るととてもまともな発言ではなかった。その証拠にこの発言を聞いたかげっちの頭上にはいくつものクエスチョンマークが浮かんでいた。


「僕の推測があっているって事は……じゅんじゅんの彼女は左久良さんか右茶美さん。でも、どっちかではない。……どゆこと?」


 既に答えは一つに絞られているが常識という壁がその答えを阻んでいる。


「わかった!」


 突っ伏していたかげっちは飛び跳ねるように起き上がり俺の両肩を掴んでニヤニヤと笑みを浮かべていた。


「どちらでもないって事は……どっちもって事だ!」


「え。あ、あぁ。うん。その通り」


「そっかぁ~ だからか。良いなぁ。ずりぃなぁ~」


 かげっちの反応は俺が思っていた反応とは正反対だった。そんな驚きとは別にこんなテンションのかげっちをちー姉さんこと千景ちかげ先輩のファンが観たら幻滅してしまうのではないかという不安が俺の頭を支配した。


「なぁ、じゅんじゅん。二人が戻ってくるまでは暇しているんだろう?」


「ま、まぁ。そうだけど……」


「じゃあさ、教えてくれよ。馴れ初め。知りたいなぁ~ じゅんじゅんがどんな風に高嶺の花を2輪も手にしたのか」


「かげっちって意外と恋バナ好きなタイプ?」


「嫌だなぁ。そうじゃないよ。ちー姉さんもじゅんじゅんと同じで為奈ためなさんと風和ふわさんっていう高嶺過ぎる花を2輪も手にしているから、どうすればそれが実現可能なのかを知りたいだけ!」


「あ、あぁ~ そう言うことね……」


 何故、本来ドン引かれるであろう話をしている俺の方がドン引きしているのかは不思議でならないが、キラキラと目を輝かせながら聞きたいと無言の主張を続けるかげっちのリクエストにお応えして、少々恥ずかしい気持ちはあるが藍と千花そして俺が全員両想いのを築くことになったのか語ることにした。

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