230406

【2023年4月6日】



 高校生活初日。俺は明才高等学校の規模感に改めて驚かされることになった。


「コラ3年! 新入生が怯えているだろう。さっさと自分のフロアに戻れ~」


「あなたたちがいると新入生のホームルームが始まらないから早く戻ってください」


 他の教室には目もくれず何故か俺らの教室1年3組にだけ押し寄せてきた3年生の先輩方を担任で化学担当の千菅莉子ちすがりこ先生と副担任で科学担当の陸田鈴音りくたすずね先生が追い払った。


「まぁ、3年が押し寄せるのもわからなくはないが……」


 千菅先生はボソッとそう呟くと俺……の右後ろに座る、名前を確か先本三景さきもとみかげという男子生徒をチラリと見つめていたのを俺は見逃さなかった。



「えっと、三景だっけ? 俺は中州楯なかすじゅんよろしく。三景……かげっちで良いか?」


「じゅんじゅんって呼ばれていたよね。君、距離の詰め方早いね。嫌いじゃないけど」


 何となくかげっちもとい三景とは仲良くなれそうな雰囲気を感じて初対面かつファーストコンタクトからあだ名をつけるという中々挑戦的な事をしてみたが、予想通りかげっちとは気が合うようだった。


「それで、何かな?」


「さっきの3年生がかげっちの事ばかり見ているみたいだったから有名人か何かかと思って」


「残念ながら僕自身は有名人ではないけれど、3年生が僕を見に来ていたのは間違いないと思う」


 さて、それは何故でしょう? とでも言いたげな表情で俺を見つめたかげっちだったが、俺には見当もつかなかった。


「先本……確か、三つ前の生徒会長があなたと同じ苗字だったと記憶しているのだけれど、ご家族だったりする?」


 俺の代わりにかげっちの問いに回答したのは千花ちはなだった。


「ごめんなさい。盗み聞きをする気はなかったのだけれど、楯が私も気になっていたことを先本さんに尋ねていたものだから」


「千花さんでしたっけ? その回答はほとんど正解です。正しくは家族では無くて親族。僕の従姉にあたる人物です。写真見ますか?」


 見たいとは俺も千花も、会話には参加していないが千花の後ろから俺たちの様子をうかがっているあいも言ってはいなかったが、かげっちはどうしても従姉の写真を見せたいらしくニヤニヤと笑みを浮かべながらスマートフォンを操作して従姉の画像を俺たちに見せてきた。


「これって、かげっちじゃないのか」


「従姉というより姉弟くらいそっくり」


「フフ~ン、そんなぁ恥ずかしいじゃないですか」


 女性に見られるのが嫌な男子は一定数いると思うのだが、かげっちは俺と同じく気にしない人種のようで、俺と千花の言葉に対して頬を少し赤らめて恥じらっていた。


「ちー姉さん……千景ちかげ姉さんは僕にとって憧れの人で……」


 かげっちには大変申し訳ないがちー姉さんもとい明才高等学校の元生徒会長らしい先本千景さんに関する話は想像していた何倍もの時間語られたためここに記すのは割愛させてもらった。


 しかし、かげっちが千景さんという人物を強く慕っているという気持ちだけは十分過ぎるほど理解が出来た。



【2023年4月6日】



 高校生活が始まった。入学初日からじゅんじゅんはあだ名で呼び合う友達を作っていてすごいなぁと思って見ていた。


 ちーちゃんも初めて会う人に対して緊張しないで話せていて格好良いなぁって感じた。


 うちも早く新しい友達作りたいな。

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