230402
【2023年4月2日】
「じゃっじゃ~ん!」
「どやぁ」
明才高等学校の制服に身を包んで俺の前へと現れた二人の彼女はくるりとその場で回ってみせたり、ドヤ顔で俺を見つめてきたりしていた。
「何度見てもふたりともモデルみたいに制服を着こなしているよな」
二人が幼馴染であり彼女だからお世辞でそう言っている訳ではない。
藍はブレザーの前ボタンを全て外して中に桃色のパーカーを着用するという着崩しを入学前から行うという挑戦的なコーデではあるが、入試の際に明才の在校生が数名その様な着こなしをしていたので学校としては許されている格好なのだろう。
対して千花の方はブレザーのボタンは全て閉め、制服として届いたセット以外は不必要なものを着用しないザ・優等生のような着こなしではあるが、藍とは異なり千花はスカートを着用してはいなかった。その代わりにスカートと同じ柄のパンツを着用していた。
これは明才高等学校の制服の特徴であるらしく制服はスカートスタイルとパンツスタイルから自由選択できるシステムなのだという。
一説には男子制服でもスカートスタイルを選ぶことができるらしく、それ故なのかは定かではないが男子制服は他校と比べると若干女性的な雰囲気が感じられるため中学生男子からの評判はあまり良くはない。
「二人とも制服が届いてからコーデを考えていたみたいだけど、その恰好に決めたのか?」
「うちは、怒られたら普通に着るつもりだけど……」
「私はこれで決めるつもり。そう言う楯はスカートじゃなくて良いの? 私のスカート余っているけれど」
「履ける訳ねぇだろ」
男として、サイズとして、ふたつの意味でそう告げたつもりだったが、サイズだけなら千花のサイズは意外と履けてしまったりする。千花の履かなくなったジーンズを履いていたりするし……。
「似合うと思うのになぁ」
「藍もこう言っているけれど?」
「履きません!」
俺は語尾強めにそう告げたが、千花はクスクス笑いながら俺を見つめて
「履きたくなったらいつでも貸すから」
いつになく楽しそうな様子でそう言ってきた。
本当はこの日記に書き残したくはないことではあるのだが、藍に絶対日記に書くようにと言いつけられてしまったので仕方がなく追記する。
あのやり取りの後に俺たちは入学の記念に昔から贔屓にさせてもらっている写真館で記念撮影を行った。その写真館の主人が何を思ったか俺にも女子制服が似合いそうだなんて言い出したものだから藍と千花に火が付いてしまった。
嫌がる俺を押さえつけ、無理矢理スカートを履かせてきたふたりの言葉を俺は忘れたくても忘れる事は無いだろう。
「冗談抜きに似合い過ぎていてちょっと引いた」
そんなことを言っておきながら、自分でも悲しくなるくらいスカート姿が似合ってしまっている事実に恥ずかしがる彼氏の姿をふたりは写真に収めていた。
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