6.グループの中で

「ねぇねぇ、暑いからなんか飲もうよ」

 紗弥加ちゃんがそう言うと、周りのみんなは「そうだね」と口々に同調してコンビニへと入っていく。私も曖昧に笑いながら後ろに続いた。

 おなじみのチャイム音に迎えられた店内は空調が良く効いていてひんやりとしていた。紗弥加ちゃんは棚にあるポップを見て、毎日のように入れ替わるお菓子を手にとって眺めたりしている。

「あ、それこの前食べたよ」

 紗弥加ちゃんの手元をみながら、一人が声をかける。

「そうなんだ、どうだった?」

「そんなに甘くなくて、あとサクサクして食感が面白いの」

 みんなが紗弥加ちゃんの様子をみながらかたまっている中、私はドリンクの冷蔵庫に向かった。えーと、麦茶でいいか、と一本取り出す。

 やがて沙也加ちゃんもこちらにやってきて、隣の冷凍庫を指指した。

「ねぇねぇ、このマンゴーとパインのスムージー美味しそう!」

 店内に備え付けのドリンクサーバーで作るやつだ。沙也加ちゃんが「これにしよー」と、ひとつ取り出した。他のみんなも「じゃあ私も」と手にとっていく。

 あ、これは私も飲まないといけない流れ? 美味しそうだけど、今月はちょっと余裕無いんだけどな……。

 ふと、沙也加ちゃんや他の娘たちの胸元の赤いリボンが目に止まった。制服のリボンだから、私の胸元にも同じ赤いリボンが。あれ、なんだっけ。ラクダのやつ。みんな赤いけど、違う色にするラクダが出て来て――。

「あれ、恵子は麦茶?」

 紗弥加ちゃんの問いに、私は少しだけ迷って「うん、お茶にする」と勇気を出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る