4.妻の求めているのもは?

「いつもの納豆、二パックよろしく」

 これから帰るよとメッセージを送ると、妻からそう返事があった。

 了解と返したが、既読はつかない。

「お風呂かな」

 この時間だと、娘をお風呂に入れたり、寝かせたりと大忙しだろう。「早く入って──」と叫んでいる妻の様子を思い浮かべて楽しくなる。

 最寄り駅で電車を降りて、スーパーへ。

「あれ、一つしかないや」

 彼女が指定したいつもの納豆は、国産の中粒のものだ。ふわりとして美味しいので好んで購入してる。陳列棚には、その納豆は一パックしか残っていなかったのだ。

 とりあえず、一つをカートに入れて棚を眺める。中粒のもの、特価の小粒。ひき割りと商品が並んでいる。

 スマホを見るが、さっきのメッセージに既読はついていなかった。

「さて、と」

 この前娘に読んだ絵本を思い出した。あのラクダはどうしてネクタイを必要ないと言ったんだっけ? 数が重要なのか、質が重要なのか。妻はどちらを求めているのか。

 もう一つの納豆は、買うや、買わざるや。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る