第二色目『灰色の贋作』

序章

喰われて消える

 深夜二時丑三つ時。濃霧の満ちる路地裏にて。


 赤い残光を引きながら、灰色の少女はナイフを剥き出す。




「い、いやだ……死にたくない……しにたくない……っ」


「──────」




 姿に、血塗れた獲物は懇願する。


 しかし狩人の声は聞こえず、気付けば右腕が落ちていた。




「ぁ───ぁぁぁああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!」




 獲物は叫ぶ。


 その叫びすら、



 何度目かもわからぬ痛みに、ついに獲物の心は砕けてしまった。


 その隙を逃さんと、狩人はそのナイフで噛み付く。




「──────…………」




 数刻ほど経ち濃霧が晴れ、真っ暗な路地裏に青白い月光が差し込んだ。


 先ほどまで“狩り”が行われていたはずの其処そこにヒトの姿はなく、赤い鮮血が壁一面に残るのみ。




───誰が誰に喰われたか。誰が誰を殺したか───






───全ての真実は霧の中。


 足音もなしに、ソレは近付いていた。

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