第48話 6312マイルの恋
岩野さんの所にいた
そして今、岩野さんと
「なぁ、
「なぁに?」
「俺さぁ、このまま日本で暮らして行こうって思ってるんだよね。世界を旅して経験してきた事は本当に素晴らしい事ばかりだったけど、改めて日本の良さを感じられたというか……」
「和也は、自由を愛する人じゃなかったっけ?」
「もちろん、自由を愛してるよ! そして、俺は今、自由に生きている!」
「そうだね、素敵な仲間に囲まれて幸せなのね! 素晴らしい事だわ!」
(……また日本で会えるだろうか……)
「だろ? 素敵な仲間に囲まれてるし、日本にもまだまだ素敵な場所があるんだ!
「へっ? 一緒に、暮らす?」
「そ、次は俺がアメリカに行くから。
たくさんのお土産を床に下ろして、両腕を岩野さんの首にまわすと涙は頬を伝って落ちた。岩野さんからの言葉に直ぐに返事をする。
「私もよ、和也、愛してる!」
岩野さんはにっこりと微笑んで、
「Will you marry me?」
「Yes!」
そして、二人はそっと口づけを交わした。
行き交う人々の足音や、アナウンスの音声は二人を避けて流れて行った。嬉しそうな二人の笑顔はキラキラと舞う小さな幸せの欠片たちに包まれていく。
「気をつけてね!」
「和也もね! 待ってるから!」
「おうっ!」
エスカレーターに乗った
これまでたくさんの旅をしてきた二人の距離はとてもとても遠かった。そして、6312マイルほど離れたアメリカと日本の恋は実を結び、新しい始まりを迎えることになる。
「やっぱり寂しいのか」
黒木さんが少し茶化すように声をかけると、岩野さんがふぅーっと息を吐く。
「緊張したー! これまでの人生で一番緊張した!」
「ん? どゆこと?」
「俺、
「おぉ、そうか」
「おうっ! 俺、プロポーズしてOK貰ったんだけど……」
「だけど……?」
「彼女のご両親、許してくれるかなぁ? 急に不安になってきた」
珍しい岩野さんの姿に、思わず私も笑みが溢れてしまう。こんなに神妙な表情をしている岩野さんを初めて見たようなきがする。
「大丈夫だろ! ねぇ? 澪ちゃんもそう思うよな?」
「はい! きっと大丈夫ですよ!」
「そうかなぁー、大丈夫かなぁ? 不安だわー、俺」
その姿を見て黒木さんも笑っている。
「すげぇ遠距離恋愛だったな」
「距離も時差も凄かったよ……」
「おめでとうございます!
そう呟いた私と黒木さんの視線が合った。何だかちょっぴり私の胸の奥がチクりとしたかもしれない。
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